大家さんの消費税還付、海外不動産投資の節税スキームは認められない方向へ

11月26日に不動産投資に関する税制改正の報道がありました。
「アパート大家の節税策防止 政府、消費税絡みで」
「海外住宅投資の節税認めず 政府・与党、富裕層課税強化へ」

どちらも不動産投資に関連したちょっとグレー?な節税スキームです。
昨年も「規制するような改正が行われるのでは?」と予想されていましたが、行われませんでした。

ついに2020年度の税制改正大綱に両制度の改正が盛り込まれると報道されました。

この記事では、消費税還付・海外不動産を利用した節税対策の見直しについて説明します。

大家さんの消費税還付

大家さんの消費税還付

「消費税還付の穴を塞がれる」報道内容

政府は賃貸アパートの大家の間で広がっている消費税に絡んだ節税策を防止する。金取引を繰り返して売上高をかさ上げすることで、本来認められていない税の還付を得るという手法を使えなくする。10月の消費増税で公平な課税への意識が高まっていることから、制度の抜け穴に厳しく対応する。

11月26日 日経電子版

消費税還付とは?

消費税には、消費税の課税売上にかかる消費税から、課税仕入にかかる消費税を控除する「仕入れ税額控除」という制度があります。

■仕入れ税額控除の事例
1,000円の本の売買 AさんがB書店で本を購入。
消費者(A)の購入額 1,100円(消費税100円)
出版社(C)からの仕入れ額 550円(消費税50円)
→本屋さんが納付する消費税は課税売上にかかる消費税100円から課税仕入にかかる消費税50円を控除した50円

支払った消費税より控除額が多ければ、差額分の還付を受けることができます。

不動産賃貸業の場合、仕入れ=不動産取得となり、売り上げは家賃収入になります。
住宅家賃は消費税が非課税なので、課税売上はゼロとなり、控除は発生しません。

そこで、課税売上を発生させるために金の売買を行って、消費税の還付を受けるスキームが行われてきました。

参考:自己資金が戻ってくる? 消費税還付

消費税還付イタチごっこの歴史

消費税還付イタチごっこ

不動産に関する消費税還付は過去にも改正で道を塞がれてきました。
①自動販売機設置スキーム
自販機収入など少額の課税売上を計上して、消費税還付を受けるスキームがありましたが、平成22年・平成28年の税制改正により、道を塞ぎました。
(1,000万円以上の固定資産を購入した場合、3年間は免税事業者になれないように規制)

②金売買スキーム
自販機でできなくなった消費税還付スキームも、新設法人で金の売買を続けて課税売上割合を調整することで還付が可能でしたが、今回の改正で道を塞がれることになりました。

金売買による消費税還付 穴を塞がれた影響は?

過去の消費税還付に遡及して課税をされることはないと思いますが、現在、金の売買を続けて課税売上割合を調整し、還付を受ける予定だった人は梯子を外された形になります。

見込んでいた数百万円の収入がなくなるのですから、消費税還付を受けられなくなった人は大ダメージだと思いますが、もともと、租税回避行為とみなされかねない、かなりグレーな方法だったので仕方がないところはあります。

消費税還付のサポートを積極的にしていた税理士さんは、売り上げ減でかなりのダメージを受けるかもしれません。

海外不動産を活用した減価償却による節税

海外不動産を活用した減価償却による節税

「海外不動産を活用した減価償却を認めず」 報道内容

政府・与党は海外の不動産への投資を通じた節税をできないようにする方針だ。今は高額な海外物件への投資で出る赤字と国内の所得を合算して税負担を減らせるが、この合算を認めないこととする。海外の不動産への投資は富裕層に多い節税策で、ほかの納税者との間で公平でない仕組みと判断した。

11月26日 日経電子版

どうして海外不動産が節税になる?

海外では日本と比べて建物が長期間使用されます。

住宅を建築してから滅失するまでの平均年数は、日本は約32年であるのに対して、アメリカは約66年、イギリスは約80年
会計検査院 平成27年度決算検査報告

長期間利用されるため、建物の価値が日本と比べて高く設定されます。
日本では、築30年ともなれば土地値で取引される中古住宅が、海外では当たり前のように建物に価値があるものとして取引されているのです。

例えば同じ3,000万円の中古住宅でも、築30年なら日本は土地8:建物2が、海外なら土地2:建物8というような割合になる可能性があります。

国外に所在する建物に対しても国内に所在する建物と同一の税制が適用されることとなっています。

築30年の木造建物は日本では耐用年数超過で耐用年数は4年とされます。
上記の例なら3,000万円×80%=2,400万円(建物価格)
2,400万円を4年で減価償却するため、年間600万円の経費を計上できます。

この減価償却費(600万円)は、日本での課税所得と通算して所得を圧縮できます。


所得税率が40%の人なら240万円の節税効果があります。
※上記は単純な試算であり、為替変動や諸経費などは考慮していません。

海外不動産の建物評価の高さと、日本に住んでいる人は国外の建物にも国内の建物と同じ税制が適用されることを利用した節税方法です。

海外不動産を活用した節税が不公平なのは間違いない

不公平

海外不動産を活用した減価償却による節税の恩恵を受けることができるのは、かなりの高所得者で所得税率の高い人です。

減価償却は経費を先取りしているだけで、売却時に多額の譲渡税を払うことになります。

減価償却による節税効果が譲渡益への課税を上回る人はかなりの高所得者です。

会計検査院の報告によると、譲渡益への課税を回避するため海外に移住したケースもあるようですから不公平感があるのは間違いありません。

そもそも日本の建物評価が問題なのでは?

日本の建物評価が問題

国外に所在する中古等建物については、簡便法により算定された耐用年数が建物の実際の使用期間に適合していないおそれがあると認められる。

会計検査院

これは、「日本の耐用年数制度がおかしい」ということを示しているのではないでしょうか?

建物が海外にあろうが、日本にあろうが、築年数が古くても実際に使用できるようなメンテナンスが行われていれば、価値を正しく評価すれば良いのです。

海外にある建物は、使用期間に合わせて評価をして、日本の建物は、一律耐用年数で評価をするというのはおかしな話です。

日本の住宅の資産価値を下げているのは、この耐用年数が元凶です。
これを機に改正を検討してほしいと思います。

まとめ

消費税還付、海外不動産投資の節税まとめ

保険・不動産などを利用した節税はどんどん道を塞がれています。
過去に行われたグレーなスキームは次々とできなくなっていきます。

誰かが抜け道を見つけて新しいスキームを編み出しで行くのかもしれませんが、これからは、どんな投資も正攻法で行い、決められた納税を行い、正攻法で追加投資を行って資産を拡大していく方向に進むのが良いのではないでしょうか。

建物消費税は還付しなければ、減価償却の対象になりますし、海外不動産は建物の減価が少ない分、土地の値上がりがあればキャピタルゲインを得ることができます。

正攻法で堂々とお金を儲けるという方向に思考を変えてみましょう。

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