老後資金対策としてよく利用されるiDeCoの制度が2022年4月から改正され利用できる人や期間が拡大されます。
この記事では、2022年度のiDeCoの主な改正点を解説します。
※iDeCo:個人型確定拠出年金とも呼ばれ、老後の資金を積み立てる制度です。加入者は毎月一定金額を積み立て、自分で金融商品を選択して運用し、60歳以降に給付金を受け取ることができます。
● この記事の内容
- iDeCoの加入可能年齢の拡大で加入期間が長期化し老後資金を老後資産が積み増しできる
- 企業型DC※の事業主掛金とiDeCoの掛金との合算管理で全ての会社員がiDeCoの加入対象になる(令和4年10月)
※確定拠出型年金=DC(Defined Contribution):加入者ごとに拠出された掛金を加入者自らが運用し、その運用結果に基づいて給付額が決定される年金制度のこと
● 先読み この記事の結論
税制優遇のメリットを生かしながら老後資金を用意できるiDeCoに全ての会社員が加入できるようになります。
空白期間のデメリットがあり加入していなかった50代の人も活用できるように加入年齢が引き上げられます。
目次
確定拠出年金 受給開始時期の選択肢の拡大(2022年4月1日~)
2022年4月から、公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大に併せて、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)における老齢給付金の受給開始の上限年齢を70歳から75歳に引き上げます。
これによって、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)における老齢給付金は、60歳(加入者資格喪失後)から75歳に達するまでの間で給付金受給開始時期を選択することができるようになります。
「多様化する働き方・暮らし方に合わせられる」というメリットがある一方で、受け取り時期を非課税で運用を継続できるとは言うものの、口座管理料の負担があり、その分受取額が減ってしまうというデメリットがあります。
公的年金とは違い受給開始時期を遅らせても受給額が増えることはありません。
マーケットの状況によるものの、公的年金の繰下げ期間の収入源のひとつとして確定拠出型年金を活用することが現実的です。
企業型DC・iDeCo加入可能年齢の拡大(2022年5月1日~)
① 企業型DC
改正前は60歳未満の厚生年金被保険者を加入者とすることができました。
また、60歳以降は同一事業所で引き続き使用される厚生年金被保険者について65歳未満の規約で定める年齢まで加入者とすることができました。
2022年5月からは厚生年金被保険者で70歳未満であれば加入者とすることができるようになります。ただし、企業によって加入できる年齢などが異なります
※企業型DCの老齢給付金を受給した人は企業型DCには再加入できませんが、iDeCoの老齢給付金を受給した人は企業型DCへの加入は可能です。
② iDeCo
改正前はiDeCoには60歳未満の国民年金被保険者が加入可能という決まりでした。
今回の改正ではこの年齢要件が撤廃され、国民年金被保険者ということだけが加入の主な要件となりました。
これまで海外居住者はiDeCoに加入できませんでしたが、国民年金に任意加入していればiDeCoに加入できるようになります。
※iDeCoの老齢給付金を受給した人はiDeCoには再加入できませんが、企業型DCの老齢給付金を受給した人はiDeCoへの加入は可能です。
※老齢基礎年金又は老齢厚生年金を65歳前に繰上げ請求した人は改正によりiDeCoの加入要件を満たした場合であっても、iDeCoに加入することはできません。
この改正によって2つのメリットがあります。
①加入期間が長くなる分、老後資産が積み増しできる
②加入期間が長くなった分の掛金の所得控除が受けられる
加入期間に応じた年金の受取開始可能年齢
上記のメリットに加えて、50歳以降でiDeCoに新規加入すると60歳受け取りの間の空白期間が生まれてしまう問題が解決されました。
改正前は50歳以降にiDeCoに加入すると、60歳では年金が受け取れず、口座管理手数料を払いながら残高の運用を継続するしかありませんでした。(下表参照)
加入期間 | 年金受取開始可能年齢 |
8年~10年 | 61歳 |
6年~8年 | 62歳 |
4年~6年 | 63歳 |
2年~4年 | 64歳 |
1カ月~2年 | 65歳 |
今回の改正によって50歳以降に加入しても受給開始年齢に達するまで加入し続ければ、空白の期間はなくすことができるようになりました。
脱退一時金の受給要件の見直し(2022年5月1日~)
企業型DCの中途引き出し(脱退一時金)が例外的に認められていたのは、個人別管理資産の額が15,000円以下である場合に限られていました。
2022年5月からは、個人別管理資産の額が15,000円を超えていてもiDeCoの脱退一時金の受給要件を満たしていれば、iDeCoに資産を移換しなくても企業型DCの脱退一時金を受給できるように改正されます。
企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和(2022年10月1日~)
現在のiDeCoは原則60歳未満の人が加入可能となっていますが、企業型DCに加入している人は、規約の定めや事業主掛け金などのハードルがあり、ほぼiDeCoに加入できませんでした。
企業型DC:会社が掛金を拠出し、加入者(従業員)が運用を行う企業年金で運用結果によって給付額が変動する
企業型DB:会社が拠出から給付までの責任を負う企業年金で給付額があらかじめ約束されている
2022年10月の改正で企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金との合算管理の仕組みを構築し、iDeCoに原則加入できるようになります。
iDeCoの拠出限度額は次の範囲内となります。
- 企業年金に応じたiDeCoの限度額以内(下表)
- 企業型DCの会社掛金とiDeCoの掛金の合計が55,000円/月以内(iDeCoは20,000円/月以内)
- 企業型DBにも加入している場合には会社掛金とiDeCoの掛金の合計が27,500円/月以内(iDeCoは12,000円/月以内)
職業 | 上限金額 |
公務員 | 月額1万2000円 (年額14万4000円) |
会社員 (確定給付企業年金に加入) | 月額1万2000円※1 (年額14万4000円) |
会社員 (企業型確定拠出年金) | 月額2万円 (年額24万円) |
会社員 (勤め先に企業年金がない) | 月額2万3000円 (年額27万6000円) |
専業主婦(夫) | 月額2万3000円 (年額27万6000円) |
自営業 | 月額6万8000円※2 (年額81万6000円) |
※1 確定給付企業年金と企業型確定拠出年金の両方に加入している場合も上限額は月額1万2000円です。
※2 国民年金基金の掛金や国民年金の付加保険料と合わせて6万8000円が限度となります。
マッチング拠出(事業主掛金に上乗せして、自身で掛金を拠出する制度)がすでに認められている場合、マッチング拠出とiDeCoの併用はできません。「マッチング拠出」か「iDeCo」か選択することになります。
2022年度のiDeCo制度改正 まとめ
iDeCoでは税制優遇のメリットを生かしながら老後資金を用意できます。今回の改正によってこれまでiDeCoに加入できなかった人、空白期間のデメリットがあり加入していなかった50代の人も活用できるようになりました。老後資金対策に改めてiDeCoの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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