社会保険料の壁

政府は、パートやアルバイトなどの短時間労働者が厚生年金に加入する際の企業規模の要件を撤廃する方針と報道されました。

パート・アルバイトで働くあなたにとって、社会保険は身近な存在でしょうか?社会保険には、健康保険や厚生年金など、生活を支える重要な制度が含まれています。

しかし、社会保険には「年収の壁」と呼ばれる制限があり、一定の年収を超えると加入が義務化されるだけでなく、保険料負担も増加します。

厚生労働省の令和3年「パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」によると20%弱のパート従業員が就労調整を行っており、就労調整をする理由では「一定額(130 万円)を超えると配偶者の健康保険、厚生年金保険の被扶養者からはずれ、自分で加入しなければならなくなるから」が約60%となっていることから年収の壁を意識して働いている人が多いことが分かります。

本記事では、パート・アルバイトで働くあなたにとって重要な「社会保険の年収の壁」について、わかりやすく解説します。

社会保険の年収の壁とは?

社会保険の年収の壁とは、社会保険の加入義務や保険料の負担額が変わる年収のボーダーラインです。

社会保険料の壁は以下の2種類があります。

①従業員50人超の企業に週20時間以上勤務する場合:106万円の壁

従業員50人超の企業に勤めるパート・アルバイトなどで給与収入が年間106万円(月額88,000円)を超えると社会保険料が発生します。 ※企業要件は2024年10月から

・加入する制度:厚生年金保険・健康保険

a.厚生年金保険:18.3%
b.健康保険:約10%(協会けんぽ、都道府県により異なる)
c.介護保険:1.6%
d.雇用保険:0.6%

a~cは労使折半のため労働者は上記の50%を負担

2024年11月8日に以下の報道がありました。報道の通りに制度が改正されると106万円の壁はなくなることになります。

厚生労働省は、会社員に扶養されるパートら短時間労働者が厚生年金に加入する年収要件(106万円以上)を撤廃する方向で最終調整に入った。勤務先の従業員数を51人以上とする企業規模の要件もなくす。週の労働時間が20時間以上あれば、年収を問わず加入することになる。 2024年11月8日 共同通信

②上記①以外の場合:130万円の壁

・加入する制度:国民年金・国民健康保険

年収が130万円を超えると国民健康保険の被扶養者や国民年金の第3号被保険者として認められず、国民健康保険や国民年金保険料などの社会保険料が発生します。

参考↓

パート従業員や高齢者の働き方に影響大 ファイナンシャルプランナーが令和4年度の公的年金改正を解説

毎年4月は年度の切り替わりで仕事・生活に直結する制度改正が行われることが多くなっています。2022年4月は公的年金の改正が行われることになっています。 特に働くシニア…

年収の壁を超えた場合の影響

年収の壁を超えると、以下のような影響を受けます。

  • 保険料負担の増加:健康保険や厚生年金の保険料が、加入者本人が全額負担することになります。
  • 配偶者控除の喪失(減少):配偶者が配偶者控除を受けられなくなる(年収に応じて減少する)ため、世帯全体の所得が減少します。

年収の壁対策

年収の壁による影響を回避するためには、以下の対策が有効です。

  • 勤務時間を調整する:週あたりの労働時間を20時間未満にすることで、106万円の壁を回避することができます。
  • 社会保険加入を検討する:将来的な生活保障を考えた場合、壁を気にせずに収入を増やして社会保険に加入することも選択肢の一つです。
  • 支援強化パッケージを活用:勤務する企業の対応次第ではありますが、政府の支援強化パッケージ(キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース)を活用することで年収の壁対策を行うことができます。

「106万円の壁」の対策 

①パート・アルバイトの人が年収106万円を超えて厚生年金保険・健康保険に加入する際に、手取り収入が減らないよう社会保険適用促進手当を支給する場合に一定の要件をクリアすると助成が受けられます。(手当等支給メニュー)

②週の所定労働時間を延長しかつ賃金を一定割合増額する措置を6か月継続した場合、1人当たり30万円(中小企業の場合)の助成が受けられます。(労働時間延長メニュー)

「130万円の壁」の対策

パート・アルバイトの人が繫忙期などに労働時間をのばした場合、職場から一時的に収入が増加した旨の証明をもらうことで引き続き配偶者の扶養に入り続けることが可能になります。

社会保険に加入した場合のシミュレーション

要件を満たすパート・アルバイトの人が年収の壁を超えて収入を増やした場合、健康保険・厚生年金保険への加入の対象となり、将来の給付が増えるものの、社会保険料負担(約15%)が発生し、手取り収入が減少します。

社会保険料の壁の影響を図解

上記のように社会保険料を負担することで給与の手取り額は減りますが、負担した社会保険料は年金として老後に戻ってくることになります。

増える年金額(月額)の目安

加入期間/給与(年)120万円150万円200万円250万円300万円
1年500円600円800円1,000円1,300円
5年2,400円3,200円4,300円5,000円6,600円
10年4,900円6,400円8,600円10,100円13,200円
15年7,500円9,600円13,000円15,300円20,000円
20年9,900円12,800円17,300円20,300円26,500円
25年12,400円16,000円21,600円25,400円33,100円
30年14,900円19,300円25,900円30,500円39,700円
厚生労働省ホームページより引用

負担する保険料の目安

給与(年)120万円150万円200万円250万円300万円
保険料額(月)9,000円11,600円15,600円18,300円23,800円
厚生労働省ホームページより引用

社会保険加入のメリット

社会保険に加入すると手取り収入が減少する一方で以下のメリットがあります。

  • 社会保険に加入して働いた場合、支払った厚生年金保険料に応じて受け取ることができる年金額が増えます。
  • 医療保険においては、ケガや病気で会社を休んだ時に「傷病手当金」、産前産後休業期間中に「出産手当金」を受け取ることができます。

まとめ

社会保険の年収の壁は、パート・アルバイト労働者にとって重要な問題です。

年収の壁を超えると、社会保険料の負担が発生したり、控除を受けられなくなったりする可能性があります。

今後は労働市場のひっ迫による賃金アップや社会保険の適用拡大によって、社会保険加入の対象となる人が増えることが予想されます。

年収の壁を超えないための対策を講じるとともに、社会保険加入のメリットについても理解して自分のライフプランに合った働き方を考えておくことが大切です。

パート・アルバイトで働いている方は、ぜひ本記事を参考に、自分に合った働き方、社会保険の加入方法を検討してみてください。

「厚生年金、年収問わずパート加入 「106万円の壁」撤廃へ」との報道があり追記・修正して2024年11月8日に再度公開しました。

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