新型コロナウイルスの影響で経済見通しの暗い状況が続いています。
毎日のようにメディアが不安をあおっていますので、こういう時には人は不安になり冷静な判断ができなくなります。
不安をあおるために「債務超過で日銀はかなり危ないらしい」「株価下落でGPIFの年金が溶ける」「ハイパーインフレで住宅ローン破綻」「日本はコロナ対策の借金で将来が危ない」とか言い出す人も出てきます。
このような不安をあおりやすい状況では、不動産投資のような比較的安定した収入を生む投資の勧誘はやりやすくなり、不動産投資失敗の原因となる物件を買ってしまう人が増えます。
この記事では、不動産投資に失敗しないために不動産投資の収益構造の基本的な考え方を説明します。
目次
よくある不動産投資の勧誘にだまされてはいけない

大手企業も経営が厳しくなる
収入の柱を増やしておけば安心
不動産は毎月家賃収入があり安心
団体信用生命保険に加入すれば保険の代わりになる
将来、年金がもらえるかは分からない不動産投資は年金の代わりになる
不動産に限らず、投資の勧誘は不安をあおってから投資先のメリットをアピールするのが一般的です。
これらのセールストークにコロナウイルスを組み込むと立派なコロナ禍でのセールストークの出来上がりです。
不動産投資は仕組みを理解して正しく行えば、資産形成に役立ちますが、やり方を間違えると投資ではなくギャンブルになってしまいます。
不安にあおられて始めるのではなく、目的を明確にしたうえで収益構造をしっかり理解してスタートすることが大切です。
不動産投資の収益構造

不動産投資の収益=①保有期間中のキャッシュフロー累計+②売却益(損)
①キャッシュフロー累計=賃料収入-(ローン元金返済-支払金利-経費-税金)
②売却益=売却価格-(頭金-ローン残債-経費-税金)
対象の不動産を売却をしないと最終的な損益は確定しないのが不動産投資です。
株も同じですが、保有期間中の損益は含み益(含み損)です。
不動産投資は、常に物件の現在価値(いま売ったら、いくらの現金になる)を知ることが大切です。
物件の現在価値を知ることで購入価格との差額(含み益)を知ることができるからです。
収益不動産は長期で保有していれば、いつかは購入した価格と同額のキャッシュフローが貯まります。
その時点で売却すれば売却益=その不動産投資の収益となります。
「いつか現金化する」という視点を持たずに不動産投資をすると、最終的に損をしたり、売却時の税金支払いの用意が足りないなどの可能性があるので、所有不動産の価値は常に気にかけておく必要があります。
現金化という視点で考えると、物件選定もしやすくなります。
キャッシュフローが多くても、将来土地の値下がりが見込まれるような地域で投資をしたら、どうでしょうか?
多くのキャッシュフローの累積が貯まっていても、売却をしたときに多額の売却損が出てしまえば結果として投資そのものはそれほど儲からなかったということになる可能性は十分にありえます。
物件選定の時点から現金化しやすく、価格変動リスクの低い地域の物件を選ぶことが大切です。
売却=利益確定までの収益を意識する

不動産投資はキャッシュフローが重要とよく言われます。
これは正しいのですが、キャッシュフローだけで判断するのは間違いです。
一般的な不動産投資は建物を貸して、その対価として家賃をもらうものです。
建物が古くなれば家賃は下落していきます。
家賃の下落を抑えるために建物の修繕を行いますが、建物を存続させるための経費が家賃を上回ってしまう日が訪れます。
投資用不動産(建物)はこの時点で寿命を迎えるということになります。
残る資産は、その建物が建っている土地です。
不動産投資は、日々の運営で得られるキャッシュフローと収益を生む建物の建っている土地が資産ということになります。
ただし、キャッシュフローは売却によって利益確定をするまでは収益なのか、ただの資産の取崩しなのか分からないのが難しいところです。
土地は大きな資産ですが、時価の変動があり、現金化するには時間がかかるというのが難点です。
一般的にキャッシュフローの多くなる物件は地方都市の高利回り物件です。
地方には特有のリスク(経費率の高さ、価格下落)があり、表面利回りの高い物件が流通しています。
高利回りに加えて、土地の価格が安いことによって減価償却費が多くなりキャッシュフローを大きくします。
価格に占める建物の比率が大きいため計上できる減価償却費が多いので、税金の支払いが少なくて済む、そのためキャッシュフローが大きいという構造ですが、建物の価格が高いということは建物が減価したときの不動産価値(土地の価値)は低いということです。
土地の価値が低いということは、売却する時に購入価格を大幅に下回る可能性が高く、さらに多額の減価償却を経費として先に計上しているので、売却価格が購入価格を大幅に下回っても売却益がでてしまい譲渡所得税を払う可能性もあります。
キャッシュフローだけに注目しすぎると最終的に投資に失敗している可能性もあるので気を付けましょう。
参考:収益物件売却時の税金
個人の場合、キャッシュフローは累進の所得税率、売却益は保有期間による譲渡所得税率で税額が計算されますので、税率を比較してどちらを重視すると得か考えても良いと思います。
どちらにしても、保有期間中の利益はあくまで含み益であり、売却をしなければ損益は確定しないということです。
キャッシュフローだけでなく売却までの収支を税引き後で考えておく必要があります。
家賃の売却への影響を理解する

いつか現金化するという意識を持つと、家賃への意識も変わります。
投資用不動産は「家賃収入÷利回り」で価格を算出します。
家賃が下がると売却金額も下がるということになります。
築年数の経過によって家賃が下がるのは仕方のないことですが、築年数相応の減価なのか周辺物件と比較しておくことが大切です。
必要以上に家賃を下げるということは売却時に得られる利益を失っていることと同じことになるからです。
購入時は物件の価格設定が適正か調べるために家賃の調査は必須です。
相場より家賃が高い物件はあとから家賃の下落で運営、売却価格に影響がでます。
保有している間も定期的に周辺物件の家賃はチェックしておく必要があります。
家賃相場が分からないと空室を恐れるあまり安易に家賃を下げてしまい、売却価格に影響してしまいます。
周辺物件の家賃をチェックすることは修繕工事などの時にも必要です。
修繕費の回収やどの程度の賃料アップが見込めるか判断をするためです。
保有している物件の修繕を全く行わず、家賃を下げて満室をキープしている投資家もいるようですが、売却価格がどんどん下がっていくため、土地の価値がとても高い場合を除いてお勧めできません。
家賃を適正に保つことが最終的な利益のために必要です。
収益に影響大 税金を理解する

不動産投資は税金との闘いとも言えるほど、税金は収支に大きな影響があります。
シミュレーションを行う時には必ず税引き後の数字を確認しましょう。
不動産投資で個人が支払う税金
- 所得税(所得の5%~45%で累進)
- 復興所得税(所得税額の2.1%)
- 住民税(所得の約10%+均等割)
- 個人事業税(不動産所得の290万円超の部分に5%)
- 売却時の譲渡所得税(保有期間5年以下:39.63%、5年超:20.315%)
- 固都税
不動産投資で法人が支払う税金
- 法人税(全ての事業合算で税引前利益800万円までの利益に25%、800万円超の部分に37%)
- 法人住民税(法人税額の12.9%+均等割7万円)
- 法人事業税(税引前利益の5%)
- 地方法人特別税(法人事業税の43.2%)
- 地方法人税(法人税額の4.4%)
- 固都税
参考:不動産投資の必要経費と税務上の取扱い 物件取得時
不動産投資の必要経費と税務上の取扱い 物件保有期間
自分が投資をした時にはどの税が税率何%でいくら支払うのか事前にチェックしましよう。
不動産投資の利益 まとめ

このように不動産投資の利益と収益構造を考えてみると、現金化したときの不動産の価値と税金が重要であることが分かると思います。
しっかりと税引き後の数値でシミュレーションをすれば、どんな物件を買ってしまうのが危ないかなんとなく分かってきます。
そもそも収益がでないので必要以上に節税をアピール、高利回りだけにフォーカス、相場から外れた家賃で運営し値付けされているなどの物件は買ってはいけない物件だと言えます。
不動産は融資を受けて買うことが多いので、融資を理由に物件を選ぶ人も多いですが、銀行の評価と不動産の収益性は別問題です。
利益をあげることを目指して不動産投資をするのですから、投資対象の不動産には収益性と資産価値を重視することが大切です。
不動産投資はいろいろな手法があります。保有している期間はそれほど大きく儲かるというものではありませんが、資産価値の下がりにくい物件に投資できれば、売却後に資産形成のスピードを上げてくれる投資手法です。
不動産投資は数字とロジックです。
現金化したときの不動産の価値と税引き後の収支シミュレーションを行ない、資産価値の高い不動産に投資をすることを行い失敗を防いでください。
この記事が不安にあおられることなく、しっかりと数字の合う投資先をみつけていただくための参考になれば幸いです。