毎年4月は年度の切り替わりで仕事・生活に直結する制度改正が行われることが多くなっています。2022年4月は公的年金の改正が行われることになっています。

特に働くシニア世代やパートなどの短時間労働者に影響のある年金制度改正です。

この記事では法改正のポイントと働くシニア世代、パートなどの短時間労働者への影響を説明します。

この記事の内容

  • 働くシニアの年金受給の見直しで年金を受給しながら働きやすくなる
  • 年金受給開始時期と増減率の見直され年金受給の選択肢が拡大する
  • パート従業員が厚生年金保険・健康保険対象になるよう適用拡大される(令和4年10月)

先読み この記事の結論

短時間労働者の将来の保障を充実させる、長く働くことでメリットを得られる制度改正のため、改正によって老後のライフプランに選択肢が増えます。

繰下げ受給の上限年齢引上げと繰上げ受給の減額率の見直し

年金イメージ

公的年金は、原則として、65歳から受け取ることができますが、現行制度では、希望すれば60歳から70歳の間で自由に受給開始時期を選ぶことが出来ます。

65歳より早く受け取り始めた場合(繰上げ受給)には減額した年金を、65歳より遅く受け取り始めた場合(繰下げ受給)には増額した年金を、それぞれ生涯を通じて受け取ることができます。

現行制度では、60歳から70歳まで自分で選択可能となっている年金受給開始時期について、その上限を75歳に引き上げます。繰下げ増額率は1月あたり、プラス0.7%(最大プラス84%)となります。

繰り下げ受給による年金増額グラフ
日本年金機構ホームページより引用

現行制度では繰上げ受給をした場合の減額率は1月あたり0.5%ですが、0.4%に改正されます。
60歳から受給した場合の減額率は24%になります。

繰り上げ受給の減額率改正のグラフ
日本年金機構ホームページより引用

在職老齢年金制度の見直し

シニア世代イメージ

在職老齢年金とは会社などに勤めていて「一定の収入」があると年金額が減額される仕組みです。(老齢厚生年金を対象)

①年金の支給停止基準を緩和

2022年4月から60〜64歳の人に支給される年金の支給が停止される基準を現行の賃金と年金月額の合計額28万円から47万円に緩和します。

65歳以上の在職老齢年金制度については、現行の基準は47万円となっており、変更はされません。

在職老齢年金の改正点をまとめた表
日本年金機構ホームページより引用

②在職定時改定を新設

今までは働いて保険料を納めても65歳、70歳、退職時のタイミングでしか老齢厚生年金の額は改定されませんでした。

今回の改正で65歳以上の人は「会社を退職しなくても、毎年10月に老齢厚生年金の額が改定」となります。

働いて保険料を納めた効果が退職を待たずに毎年、年金額に反映されるように改正されます。

在職定時改定のグラフ
日本年金機構ホームページより引用

社会保険被用者保険の適応拡大(令和4年10月~)

パート労働者のイメージ

事業所の企業規模要件を段階的に引き下げ

令和4年10月に従業員100人超規模、令和6年10月に50人超規模とします。

従業員要件の一部変更

  • ①週の所定労働時間が20時間以上
  • ②雇用期間が2か月超見込まれる
  • ③賃金月額が8.8万円以上である
  • ④学生でない

①③④は今まで通りですが、②の雇用期間を1年以上から2か月超に適用を変更します。
加えて、強制適用の対象となる5人以上の個人事業所の適用業種に、弁護士、税理士等の士業を追加します。

パート従業員が適用拡大の対象となるとどうなる

配偶者の扶養に入るため、年収130万円を超えないよう就業時間を抑えて働いている人は多いと思います。

もし、適用拡大の対象となった場合には8.8万円/月(年収106万円)の給与で扶養から外れることになりますので、改正前の130万円よりも低い基準で扶養から外れることになります。

扶養を外れると厚生年金・健康保険に加入することになり給与に応じた保険料を払うことになります。(保険料は勤務先と折半)

負担が増える一方で、新たに社会保険に加入することのメリットとしては、厚生年金に加入することで、将来の年金受給額が増えます。
健康保険への加入では傷病手当金や出産手当金の受給が可能になります。

令和4年度の年金制度改正 まとめ

まとめ
  • 66歳から70歳までとなっている老齢年金の繰下げ年齢の上限が75歳に引き上げられます。
    75歳まで引き上げられることにより年金受給額が最大で84%増額になります。
  • 繰上げ受給をした場合の減額率が、1月あたり0.5%から0.4%に変更されます。
    60歳から受給した場合の減額率は30%(改正前)→24%(改正後)になります。
  • 在職老齢年金の支給停止基準が賃金と年金月額の合計額28万円(改正前)→47万円(改正後)に緩和されます。
  • 65歳以上の人は働いて保険料を納めた効果が毎年、年金額に反映されるように改正されます。
  • 従業員数100人超の企業で働く短時間労働者(一定の要件あり)が新たに厚生年金保険・健康保険の適用になります。(令和4年10月~)

今回の法改正を機会として老後の生活や老後資金(年金受給額など)について、改めて見直してみるとよいかもしれません。

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