不動産投資と収益物件の情報サイト健美家が2019年に行った不動産投資に関する意識調査によると「不動産投資をしようと思ったのはどうしてですか?」という設問に対して約25%の人がセミリタイアのためと回答しています。

セミリタイアとは、貯金、投資などで生活費を得ながら、できるだけ働かずに生活する生活スタイルのことです。

株や投資信託など投資に関するコンテンツの中にはセミリタイアに関するものはたくさんあり、セミリタイアしたと称する人のブログや書籍などもたくさんあります。

セミリタイアすると時間にしばられない、ストレスが減るなどのメリットを強調する記事が多い一方で、セミリタイア後の生活がどうなるのかお金の面で解説している記事はあまりありません。

この記事ではセミリタイアした場合の家計収支と社会保障の面からお金の話をしようと思います。

セミリタイアにはいくら必要?具体的な金額は?

セミリタイアの必要額

セミリタイアの必要額については多くの仮説があります。
貯金が5,000万円とか1億円とか、貯金ではなく資産と表現されていたりして具体的な数値はわかりません。

ネット上では生活費から逆算して計算しているものもあります。
生活費は総務省家計調査を使用していることが多いのですが、総務省家計調査は持ち家率が約80%と高く、住居費が低い(住宅ローン返済は計上されていない)ため、この数値はあくまで参考値と考えるしかありません。

参考値をもとに計算するとすれば、年間で360万円~400万円程度の収入が得られる所得があるか、取崩し可能な資産があることが目安となります。

大 都 市中 都 市小都市
食料82,28577,21676,410
水道・光熱費21,33121,53922,088
家具・家事用品12,12612,12512,170
被服履物14,21112,58212,581
保険医療14,05712,53712,162
交通費10,1637,3687,034
車関連24,24032,07631,758
通信15,52115,75216,941
教育23,92517,89117,505
教養娯楽34,33532,18031,498
その他58,03861,60867,484
310,232302,874307,631
持ち家率75.5%78.4%84.4%
うちローンあり39.9%41.4%40.5%
勤労2人以上世帯の1か月間の収入と支出 出典:総務省家計調査

もし、セミリタイアに必要な具体的金額を計算したいなら、1年間の支出を自分の家計から算出すると良いでしょう。

もちろん、1年分だけでなく、家族構成やライフスタイルが変わるごとに、この先の人生においていくら支出があるかを予測していきます。

そのためにはライフプラン表の作成が有効です。

具体的な額を把握できれば、その分を貯蓄として持っておくか、その生活費分の収益を生んでくれる資産を持つとセミリタイアが近づきます。

セミリタイアのための資産額

セミリタイアのための資産額

①株の配当

日経新聞のデータによると、東証1部全銘柄の平均配当利回りは約2%です。
高配当の株だけを選んで購入すればもっと高いリターンを得ることはできると思いますが、平均値の株の配当(税引き後)で生活をしていこうと考えるなら生活費を2%で稼げるだけの株式を保有すれば良いということになります。

仮に生活費が300万円/年だとしたら、配当だけで生活するには年間380万円くらいの配当金が必要です。
(配当金は20.315%の税率のため)
380万円の配当を得るための株式は利回りが2%なら1億9,000万円、3%なら約13,000万円です。

②不動産投資

不動産投資でセミリタイヤの目安はいくつかあります。
その中で目安としてのキャッシュフロー〇〇円はあまりお勧めできません。

その理由として、融資を利用している場合のキャッシュフローは融資期間を長くするだけで高くなるため目安として適していない、家賃は経年で減価する、減価償却が終わるとキャッシュフローは減るなどがあります。

不動産投資は不動産賃貸業という事業です。
資産額やキャッシュフローがいくらという数値ではなく、時価ベースでの純資産を増やしていきながら、定期的に物件を入れ替え、生活に困らない程度の安定した収益を得られるくらいに事業が安定した段階でセミリタイアを考えるべきでしょう。

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会社員と個人事業主の社会保障比較

会社員と個人事業主の社会保障比較

会社を辞めて個人事業主になったり、資産を取り崩して生活していくと、会社員の時に加入していた社会保険や厚生年金などの社会保障からは脱退となります。

社会保障とは、傷病や失業、労働災害、退職などで生活が不安定になった時に、健康保険や年金、社会福祉制度など法律に基づく公的な仕組みを活用して、生活を保障することです。

会社員と個人事業主の社会保障を比較すると以下のようになります。

①「健康保険」「介護保険」の比較

国民健康保険 横浜市の場合

保険料=基準総所得金額×所得割料率+均等割料率(額)

区分所得割料率均等割料率(額)賦課限度額
医療分7.22%34,320円630,000円
支援分2.17%10,320円190,000円
介護分2.46%14,450円170,000円
※介護分は40歳~64歳のみ
※均等割は所得に応じた減免あり
※加入者ごとに各保険料を計算し、合計したものが世帯の保険料となります。

参考:給与収入700万円(所得金額510万円)4人家族(夫婦+子2人)の場合
保険料約72万円(年)

協会けんぽ 神奈川県の場合

標準報酬月額に保険料率をかけて算出します。
扶養家族がいればその分の保険料も上記に含まれます。

健康保険料率は9.93%、40歳~64歳は介護保険料率(1.79%)がプラスされます。
保険料は企業と従業員が折半して払います。

②「年金保険」

会社員は厚生年金に加入することになるので保険料は労使折半となります。
毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分した標準報酬月額と標準賞与額に保険料率(18.3%を折半)をかけた額を保険料として支払います。

個人事業主や無職の人は国民年金保険料(16,540円)を支払います。

年収400万円からスタートし、ピーク時の年収750万円の場合(年2%昇給)、65歳から受給できる年金の年額は約194万円です。
もし、45歳で退職し、その後は国民年金保険料のみを支払った場合には、約142万円が年金受給額となります。その差は52万円です。

公的年金は老後資産としては最も安定した資産です。
政策等で調整される可能性はありますが、決まった額が死ぬまでもらえることが確定しています。
貯蓄や積立資産は取り崩しが進むといつかはゼロになりますが、公的年金は生きている限り給付を受けることができます。

計算例の差額52万円/年は長生きすればするほど差が広がることになります。

③「雇用保険」

雇用保険は労働者が失業など雇用の継続が困難になったとき、技能の習得などのために職業教育訓練を受けたときに給付を行う制度です。

個人事業主本人は加入できません。

一般事業の場合、保険料率は0.9%(企業0.6%、従業員0.3%)です。

④「労災保険」

労災保険制度は、労働者が勤務中や通勤の際に災害に遭った場合に、医療費や休業中の賃金の補償を行う制度です。
保険料は全額企業負担。保険料率は業種により異なります。

個人事業主本人は原則加入できませんが、土木、建築、運送業などの業種では特別加入ができる場合があります。

セミリタイアにはいくら必要? まとめ

セミリタイアにはいくら必要? まとめ

①セミリタイアの必要額は家族構成や生活水準によって異なる。ネット上の概算額ではなく、ライフプラン表作成で数値化する。

②会社員と比較して個人事業主は社会保障の面でコストが高い、もしくは保障が低くなる可能性がある。特に年金額には注意。

上記の2点がセミリタイアを考える際のポイントになります。

お金の面から考えると、安定した給与収入があり社会保険、厚生年金の会社員には多大な恩恵があります。

セミリタイアを考えるなら、会社員でいることのメリットとの比較も含めて、ライフプランの数値をしっかりと検討してみましょう。

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