どうして貯蓄や資産形成が必要かと言うと貯めたお金を使うためです。
服を買うため、ゲームソフトを買うため、車を買うため、家を買うためといったことや老後の生活資金のためなどお金を貯める目的はさまざまです。
貯めたお金を使うタイミングは人それぞれですが、一般的な子供のいる家族には3つの大きな支出があると言われています。
①住居費、②教育費、③老後の生活費の3つが人生の3大支出と言われるものです。
お金(資産)を貯めるにはいろいろな方法があります。
貯蓄もあれば株式や投資信託、保険など金融商品、金や不動産などの実物資産もあります。
いろいろな方法があるなかで、使う時期に応じてお金を貯める方法を選ばなければなりません。
この記事では、人生の3大支出の性質ごとに、どの方法でお金を貯めるのが最適なのか説明します。
※具体的にどの金融商品で貯めるといいという話ではなく、アウトラインの説明になります。
目次
人生の3大支出に備えるために自分の資産状況を見える化しよう

人生の3大支出に備えることの難しさは日常の生活をしながら使う時期の違うお金を貯めなければならないということです。
数十年後に必要な老後資金と比較的早い時期に必要な住宅購入資金を貯めるのは方法が違って当然です。
老後資金や住宅購入資金は目標金額への到達が多少ずれても問題ありませんが、教育費は必要な時期が明確に決まっているので、必要な時期に足りないということがあってはなりません。
このように性質の違う支出に対して、お金を貯めなければならないという難しさがあります。
金融商品は市況によって価値が変動します。
例えば、教育費は使う時期が決まっているので学費を払う1年前に全てアメリカ株で持っているというわけにはいきません。
なんらかの経済危機で株価が暴落して換金しても目標額に足りないとなれば、子供を学校に通わすことができなくなってしまいます。
必要な時期に確実に使えるようにある程度の段階で現金や値動きの少ない金融商品に変えておく必要があります。
ライフプラン表を作成し、ご自身の置かれた状況を確認しておくことでお金の必要な時期が明確になり、3大支出に対する計画的な資金準備を行うことができます。
準備を始めるタイミングが早ければ早いほど、無理のない範囲で準備をすることができますので、将来を豊かで安定したものにするための備えを始めましょう。
それでは、各支出の特徴と備え方について説明します。
住居費

住宅にかかる費用は3大支出の中でも一番高額であり、親の家を引き継いだり、資産家の生まれで住む家が用意されているといった、ごく一部の人以外は数千万円単位のお金がかかります。
住居費は継続的な支出です。
大きな金額はいつどれだけ必要になるか分かりやすいので、計画的に流動性のある資産で貯めておくと良いでしょう。
①賃貸
生涯賃貸で暮らすと仮定して、ライフプランをたてる時には、居住地の賃料相場を調べて、家族構成に合わせた家賃設定をしましょう。
賃料以外にも、更新料、火災保険、引越しをするなら、引越し費用、退去時の現状回復費用なども計算に入れておく必要があります。
参考になる賃料の数値は、各不動産ポータルサイトの賃料相場や住宅・土地統計調査などの公的な調査で調べることができます。
参考までに平成30年住宅・土地統計調査のデータを見ると東京23区の築5年程度の借家(非木造)の1畳あたりの家賃は7,709円に対し、横浜市は5,540円、さいたま市は5,129円です。茨城県になると3,401円になります。
住宅ローンは完済すれば、住宅の維持費だけの支出になりますが、家賃はどれだけ払っても完済となることはありません。
定年後にも家賃を支払いが続きますし、高齢になると賃貸住宅を探すこと自体が難しくなります。賃貸派の人は家賃の継続的な支払いに必要な貯蓄額を計算をして貯めておく必要があります。
②住宅購入
人生のライフイベントの中でも、住宅購入はライフプランに大きな影響を及ぼします。
住宅の価格は数千万円と大きいだけに、住宅ローンを借りることになります。
借入額は数千万円、返済期間も長期に渡り、住宅を購入したあとの家計に大きな影響を与えます。
「人生で最大の買い物」と言われる住宅購入ですが、他のライフイベントの時期と必要資金を見積もって、あらかじめライフプランを立てておけば、無理なく住宅ローンを支払っていくことができます。
賃貸か持ち家か、住んでいる場所、住んでいる建物のグレードなど、たくさんの要因があり、費用は大きな差があります。
金額の大きな住居費は、その土地の不動産相場や賃料相場などを知らずに試算をすると、ライフプランに大きな影響が出ますので、正確に見積もる必要があります。
ローン完済後は住居費は低く抑えられますが、リフォーム費用や管理費などは貯めておく必要があります。
教育費

教育費の総額はかなり大きな金額になり、子供の進路によっては、1,000万円以上の差が出ますが、お金の必要な時期が決まっています。
教育費の中でも最も大きい大学費用は、かなりの高確率で子どもが生まれた18年後にかかることが予測できます。
子供の進路に備えて、少しずつでも、なるべく早い時期から準備を始めることが大切です。
教育費は必要な時期と金額がある程度明確になっている支出です。
おおよその金額は文部科学省が2年に1度調査をしている「子供の学習費調査」で調べることができます。
区分 | 幼稚園 | 小学校 | 中学校 | 高等学校 | ||||
公立 | 私立 | 公立 | 私立 | 公立 | 私立 | 公立 | 私立 | |
学習費総額 | 223,647 | 527,916 | 321,281 | 1,598,691 | 488,397 | 1,406,433 | 457,380 | 969,911 |
学校教育費 | 120,738 | 331,378 | 63,102 | 904,164 | 138,961 | 1,071,438 | 280,487 | 719,051 |
学校給食費 | 19,014 | 30,880 | 43,728 | 47,638 | 42,945 | 3,731 | … | … |
学校外活動費 | 83,895 | 165,658 | 214,451 | 646,889 | 306,491 | 331,264 | 176,893 | 250,860 |
教育費は保険や貯蓄、資産価格の変動が少ないタイプの金融商品などで貯めておくと良いでしょう。
金融商品で積み立てておくことは否定しませんが、子供が進学する年に資産価格の大暴落が起きれば学費が足りなくなる可能性があります。
金融商品を選択するなら値動きの少ないものを選びましょう。
老後の生活費

3大支出のなかで一番難しいのが老後資金です。
人間は生きている限り、食事をするし住む家も必要です。生きている限りお金がかかるということです。
人は誰でもいつか死ぬわけですが、いつ死ぬのか正確に知ることはできません。
そのため住宅購入や教育費と違って目標金額が正確に設定できないというのが老後資金の難しいところです。
退職後の生活水準は人それぞれです。
「退職後は現役時代にできなかった旅行をしたい」、「田舎で自給自足の生活をしたい」、「趣味や習い事をしたい」など、いろいろな生活スタイルがあり、それにかかる費用も個人差があります。
どういう老後生活を希望するかで生活費は異なりますので、一概に生活費がいくら必要とは決められません。
それでもある程度は計算ができますし、貯める期間が長いため途中で軌道修正することもできます。
老後の生活費については、さまざまな調査がありますので、参考までに総務省家計調査を紹介します。


消費支出は夫婦世帯が239,947円、単身世帯が139,739円となっています。
あくまで平均値です。雑費・交際費が約55,000円計上されていますし、それと別に教養娯楽費が25,000円弱あり、比較的ゆとりある生活と言えるかもしれません。
持ち家率が90%超と高く、住宅にかかるお金が少ないこともこのような数字がでてくる理由かもしれません。
当然のことかもしれませんが、年齢が高くなるほど消費支出は減っていく傾向があります。
老後資金は長い期間をかけて貯めることができます。
若いうちはある程度リスクある株や投資信託などでできるだけ増やすことを目指すこともできますし、個人年金保険や不動産を使って増やすことも選択肢になります。
お金の価値は今と同じとは限らないので預貯金以外の資産を含めて準備してください。
老後が近くなってくれば取崩しをしやすくするため、ある程度リスクの低い投資信託の割合を増やしたり、管理の難しい不動産の現金化や物件の入れ替えをすると良いでしょう。
老後資金についてはいつまで仕事をするかという点が大きなポイントになります。
アルバイトでも年金以外に収入があれば、資産の取崩しスピードは緩くなりますし、仕事が続けられるなら老後(リタイア後)資金の積立が長く続けられるため計画が立てやすくなります。
自分の生活水準からある程度の目標額を決めて計画を立てましょう。
まとめ

- それぞれの支出が必要な時期と目標金額をライフプランで明確にしよう。
- 住居費は継続的な支出、他のライフイベントと重なっても大丈夫な計画を。
- 賃貸派の人はあらかじめ老後の家賃を準備しておこう。
- 教育費は必要な時に確実に必要額が貯まるよう計画し、値動きの少ない商品で貯めよう。
- 老後資金は人それぞれ。自分の生活水準からある程度の目標額を決めて計画を立てよう。
- 老後資金に不安があるなら長く働くことも考えよう。長く働くことで計画が立てやすくなります。