7月1日に令和3年度の路線価が公表されました。
新型コロナウイルスの影響を受けて外国人を中心に観光客が減り、飲食店の閉店が増えたことなどが原因で観光地や商業地で下落が目立っていますが、住宅地は比較的影響が小さく、長期間再開発を行ってきた地域では上昇している地点もあります。
今回発表されたのは相続税などの基準となる路線価ですが、不動産の価格は他のものに比べてとても分かりにくく一物四価と言われます。(1つの物件に4つの価格)
この記事では、一物四価と言われる不動産価格について説明します。
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目次
土地の一物四価とは?
土地の価格には用途別で4つの価格があります。
- 公示地価・基準地価
- 路線価
- 固定資産税評価額
- 実勢価格(取引価格)
一般的には一つの物には値段は一つです。
しかし、土地は税金をとるため、不動産の売買のためなどの目的で土地の価格が違うのです。
①公示地価・基準地価
公示地価と基準地価とは地域の標準的な土地について、売り手にも買い手にもかたよらない客観的な価値を評価した価格です。
1地点について不動産の鑑定評価の専門家である2人の不動産鑑定士が各々別々に現地を調査し、最新の取引事例やその土地からの収益の見通しなどを分析して評価を行います。
②路線価
路線価は相続税や贈与税の算出のための価格で公示地価の80%ほどに設定されています。
不動産売買の価格とは無関係ですが各道路ごとに価格が公開されているため、価格の上昇率や違う地点の価格の比較などに利用できます。
金融機関が担保評価に路線価を使うのは、各道路ごとに価格が分かることと、公示地価の80%程度に設定されているので、この金額で試算をすれば担保として売却するときに評価割れの心配がないためだと思われます。
③固定資産税評価額
固定資産税を徴収するための土地価格です。
公示価格の70%を基準に画地補正をして価格を決定しています。
一般的な目安として路線価は公示地価の80%程度、固定資産税評価額は公示地価の70%程度と言われています。
あくまで税金を取るための基準価格なので低く設定されているということでしょうか。
④実勢価格
実勢価格は実際に取引される土地の価格です。
実際の取引価格は、レインズを見ることができない消費者には実勢価格を知ることができません。
需給のバランスの影響で、土地の取引の多い場所では、公示地価よりも高くなることがあります。
需要のない土地では、路線価や固定資産税評価額を下回ることもあります。
路線価から実勢価格が分かる?
4つある不動産価格の中で実際の不動産取引で重要なのは実勢価格です。
他の価格と違い実勢価格は公表されているものではないため、消費者が知ることはできません。
実勢価格を知るためには、不動産会社などに不動産の価格査定を依頼する必要があります。
実勢価格は公表されているものではありませんが、首都圏と一部の地域であれば民間の調査で目安を調べることができます。
個人的に精度が高いと思う調査が野村不動産ソリューションズの価格動向調査です。
野村不動産の価格動向調査は対象地の営業店舗から聞き取りをした価格とのことですのでまさに実勢価格です。
個人的な実感ですが、実勢価格としては概ね正確ではないかと思います。
ただし、調査地点が多いわけではないので全てのエリアをカバーできるわけではありません。
自宅の実勢価格を知りたいという場合には、路線価から価格を計算する方法でおおまかな価格を知ることができます。
所有土地の前面道路について最新の路線価を調べます。路線価は公示地価の80%程度の水準に設定されています。
路線価は1㎡あたりの価格が記載されていますので、土地の面積をかけて0.8で割り戻すと公示地価と同水準になります。
各土地には角地であったり形状が不整形であったりと様々な個別的要因があるため、算出された価格はおおまかな土地の価格となります。
さらに公示地価と実勢価格にも乖離があります。
野村不動産ソリューションズの価格動向調査と公示地価を比較してみると乖離があることが分かります。
公示地価と実勢価格の比較
目黒-9 目黒区上目黒3丁目 931,000円
野村 目黒区上目黒3丁目 1,305,000円 140%
目黒-13 目黒区碑文谷4丁目 798,000円
野村 目黒区碑文谷4丁目 909,000円 114%
目黒-25 目黒区鷹番1丁目 888,000円
野村 目黒区鷹番1丁目 1,140,000円 128%
横須賀-24 横須賀市馬堀海岸3丁目 165,000円
野村 横須賀市馬堀海岸1丁目 175,000円 106%
相模原南-24 相模原市南区大野台7丁目 156,000円
野村 相模原市南区大野台5丁目 188,000円 120%
実勢価格は公示地価・基準地価よりもやや高いことが多く、都市部など需要の高い地域ほど乖離が大きいことが分かります。
需要の高い地域では120~140%程度、それほど需要のない地域では公示地価相当か110%程度の乖離があります。
地域の特性に応じて路線価から算出した数値を調整する必要があります。
まとめ
- 土地の価格には用途別で4つの価格がある(路線価・公示地価・固定資産税評価額・実勢価格)
- 土地の価格は、その土地個別の要素(土地の形・画地規模・相隣関係など)に加えて売主買主、それぞれの事情に左右される面も強く正確な土地の価格を知ることは難しい
- 金融機関が担保評価に路線価を使うのは、各道路ごとに価格が分かることと、公示地価の80%に設定されているので、この金額で試算をすれば売却するときに評価割れの心配がないためだと思われる
- 土地の価格は需給のバランスの影響を受けるため、その物件の所在地が土地の取引が多い地域ならば(大都市)公示地価よりも高くなり、郊外であれば公示地価と同じくらいか低くなる
最近、銀行のせいで物件を現実相場からかけ離れた高値掴みで購入をさせられたと抗議する様子が報道されていましたが、不動産の価格は少し労力を使えばある程度は調べることができます。
不動産の売却を検討している人や、購入を検討していている人は自分の身を守るためにも、おおまかな土地の価格くらいは調べてみることをお勧めします。
公示地価 ➡ 国土交通省地価公示・都道府県地価調査
路線価 ➡ 路線価図・評価倍率表