不動産

事故物件ガイドラインの不動産取引への影響は?

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心理的瑕疵物件ガイドライン

最終更新日

1月末に事故物件(心理的瑕疵)の定義等を国土交通省の有識者会議で検討するという報道がありました。

事故物件の説明義務については、法律(宅建業法)上、明確な基準がなく、現状では裁判例の積み重ねから判断されています。

心理的瑕疵は、売買価格や賃料の下落、賃貸住宅への高齢者の入居拒否の原因になっており、所有する不動産に事故が起きてしまうと、資産価値への大きな影響があります。

そこで国交省は「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」を開催し、ガイドラインの作成に乗り出しました。

この記事では、事故物件取引の現状と、ガイドラインが作成されることによる不動産取引への影響を説明します。

心理的瑕疵告知の現状

心理的瑕疵の説明義務については、法律(宅建業法)上、明確な基準がなく、現状では裁判例の積み重ねから判断されています。

基準がないため事業者によって告知するかの判断が異なるため、告知義務についての訴訟が起きたり、トラブルを恐れて必要以上に告知をしているケースもあります。

事故物件告知の事業者の対応

心理的瑕疵告知

日本賃貸住宅管理協会が、賃貸住宅管理会社にアンケート調査を行い、第22回 「賃貸住宅市場景況感調査」で結果を公表しています。

①対象となる住戸等の位置

全国では、「当該住戸のみ」が最も高く、約7割。

②重要事項説明を行う範囲

最も高いのは、「室内で自殺」で7割強。室内で亡くなった場合では状況を問わず、約6割が重要事項説明を行うと回答した。

室内の自殺や他殺、病死などがあれば告知される場合が多い。

③重要事項説明における告知期間

「入居者1回入れ替え」が最も高く、約4割。

入居者が1回または2回入れ替わったり、一定年数がたったりすれば、心理的瑕疵が重要事項説明で告知されないケースが多い。

④室内での入居者の自殺・他殺・孤独死等(死後約1週間以上)が判明したきっかけ

全国では、「家族からの連絡」が最も高く、約8割。

事故物件の判断として使われている判例

事故物件裁判例

①事故物件の定義 昭和37年6月21日 大阪高裁

戸建住宅の母屋でつながれた別棟で起きた自殺についての判例です。

事故後の経過期間が長いこと(約7年半)、当該建物が取り壊されて存在しないことなどの理由から瑕疵担保責任が否定されています。

この判例で示された瑕疵の定義を多くの裁判例が引用しています。
その物が通常保有する性質を欠いていることを瑕疵であるとして、住み心地の良さも通常保有する性質に含めると定義しています。

住み心地の良さ=心理的な嫌悪感を感じさせないという考え方です。

②事故のあった建物の歴史的背景 平成1年9月7日 横浜地裁

家族との居住目的で購入したマンションにおいて6年前に自殺があったことは瑕疵であるとして、売買契約の解除・損害賠償請求が認められた事例です。

この判例は、事件後も家族で居住していたマンションを、事件から6年経過したのちに売買した事例ですが、建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景に原因する心理的欠陥も瑕疵と理解することができると判断されました。

歴史的背景を考慮して、建物が解体済である場合は事故物件と認められないケースもみられます。

③心理的嫌悪感の希釈 平成26年8月7日 東京地裁

購入した土地上にあった建物で17年前に焼死者を出した火災事故があったことは土地の隠れた瑕疵に該当すると提訴しましたが、買主の請求が棄却された事例です。

事故発生から17年が経過している、事故のあった建物が解体済、近隣住民の関心の度合が高いとはいえない等の理由から、土地の瑕疵に該当しないと判断されました。

時間の経過とともに嫌悪感は希釈するという考え方が適用されています。

④逸失利益の算定 平成29年12月13日 京都地裁

共同住宅の一室で賃借人が自殺をした3カ月後、心理的瑕疵が生じたために当該建物と、その敷地を、通常の価格の約5割減額して第三者に売却。賃借人の保証人等に損害賠償等を求めた事例です。

この判例では売却時の土地の減額分の請求は認められず、原状回復費用と賃料の逸失利益の請求が認められました。

逸失利益は当初1年間は8割程度の減収、その後2年間は5割程度の減収が生じると判断されました。

事故物件情報サイト 大島てる

事故物件情報サイト

「大島てる」とは、事故物件の情報提供ウェブサイトです。
事故物件の情報提供をしてくれるユーザーからの投稿で事故物件の情報が掲載されています。

大家さんの立場では一度掲載されてしまうと、ずっと情報が載ってしまうので悩ましいところでしたが、ガイドラインができれば、告知をする期間の目安ができるので、告知義務についての争いは減る可能性が高いです。

ただ、告知義務がガイドライン化されても、事故物件としてサイトに掲載されていれば、ユーザーが自ら検索をして、事故物件として避けられてしまうかもしれません。

事故物件ガイドライン作成の不動産売買への影響

心的瑕疵物件ガイドライン作成の不動産売買への影響

①賃料の減額と減額期間

事故のあった賃貸物件の賃料減額と減額される期間についての判例がいくつかあります。

1年間賃貸不可、その後、2年間賃料半額というのが一般的ですが、単身者向きorファミリー向き、都市部or郊外などの事情によって、希釈スピードが異なる(都市部,単身者向けが希釈スピードが早い)という判断があり、基準があるわけではありません。

上下隣接住戸には告知義務は及ばないという判例はありますが、やはり基準があるわけではありません。

ガイドラインができると、事故物件に該当するケースや、告知すべき期間などが明確になり、賃料の減額期間についてはある程度の目安ができそうです。

ガイドラインが金額面に踏み込むかは分かりませんが、規定されなければ、減額される金額については判例に基づいた判断になりそうです。

②自然死の告知基準

事件性のない自然死(病死など)についても、「亡くなってからご遺体が発見されるまでの期間が〇日以上なら事故物件とする」などの明確な基準がありません。

高齢者の賃貸住宅入居拒否は、これが原因のひとつです。

事件性がない死亡事案については、トラブル防止の観点から告知をされているケースもありますが、明確な基準ができることで事業者の判断がスムーズになります。

③売却価格への影響

価格への影響については明確な基準はありません。
判例は心理的瑕疵の有無の争いと契約の解除を求めるものが大半で価格の減額を求めるという訴訟が起きないためだと思われます。

「心理的瑕疵」は、原因や経過した年月、周囲にどの程度知れわたっているかによって判断が異なり、減価率も10~50%程度と幅があり、影響はケースバイケースということになります。

投資用不動産では、家賃の逸失利益がある程度計算できるので、逸失利益+事故物件としての減価が価格への影響ということになります。

今回のガイドラインは、告知義務についての指針をまとめることになりそうなので、減価率の目安が示されることはなさそうですが、もし、減価率まで踏み込んだガイドラインができると、事故物件の不動産売買に明確な指針ができることになります。

事故物件ガイドラインのまとめ

心理的瑕疵物件ガイドラインのまとめ

国交省は2月5日に「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」の初会合を開きました。

議事録はまだ公開されていませんが、ガイドラインが策定されることで、事業者任せだった対応が、事故物件への具体的な基準ができることで告知義務違反の争いは減ることになりそうです。

しかし、告知義務については明確になる一方で、価格への影響などがガイドラインで言及されなければ、まだまだ査定をする事業者や市場が判断するしかないという状況は続きそうです。

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