5月29日の「ガイアの夜明け」でも取り上げられたかぼちゃの馬車問題。
シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社スマートデイズが経営破綻した問題ですが、スルガ銀行の行員の関与が疑われ融資審査が問題になっています。
住宅ローンと比較して、「普通のサラリーマンが1億円の融資を受けられるなんて異常だ」と解説している記事があったりします。
この記事では、どうしてアパートローンではサラリーマンが多額の借入ができた理由を住宅ローンとの違い、アパートローンの審査基準の視点から説明します。
目次
アパートローンとプロパーローンの違い
①アパートローン
アパートローンは個人投資家が、資産運用の一環で、不動産投資に取り組む際に用いる商品です。
住宅ローンなどと同じパッケージ化した消費性資金のひとつで、年齢や年収、購入物件の担保評価や返済比率※など多くのチェック項目があり、チェック項目をクリアすれば融資を受けることができます。
新設法人を利用して物件を購入する場合も、多くのケースがアパートローンに準ずるものと思われます。
※返済比率とは
1年間の元利金等返済額の年収における割合
②プロパーローン
様々な企業や個人事業主に融資する、一般的な事業資金融資です。
不動産賃貸業も「事業」として認められていて、収益物件=設備投資という考え方で融資します。
「物件の担保評価」「物件の収益性」だけでなく、企業の財務力、過去の実績などに対して融資が行われるため、審査は複雑でアパートローンに比べて、融資の決定には時間がかかります。
アパートローンと住宅ローンの違い
アパートローンと住宅ローンとの違いは「使用目的」と「返済財源」です。
アパートローンと住宅ローンは自分が住むか、人に貸して家賃収入を得るためのものか、という使用目的の違いがあります。
住宅ローンは自宅の取得という目的のため、審査基準が事業目的のアパートローンよりも緩くなっています。
住宅ローンの借入可能額は、アパートローンとは異なり、融資を受ける人の税込年収によって決まります。
返済比率や審査金利は銀行によって異なりますが、年収の〇%以内の返済比率なら給与の中から支払いができるだろうという判断で融資の可否を決定します。
賃貸事業目的のアパートローンは返済財源が賃料収入です。
しかし、アパートローンの審査で銀行は、直接の返済財源ではない個人の属性、年収・資産背景を審査対象とします。
その理由は下記の2点です。
①家賃収入ゼロになっても、給与収入で返済は可能か?
何らかの理由で家賃収入が返済を下回るようなケースが発生したとしても、給与からの持ち出しで返済が可能か審査しています。
②給与収入や手持ちの資産で完済までに発生する赤字を補填することが可能か?
定期的に発生する物件の大規模修繕や不測の事態による修繕を、預金や給与収入で対応可能か審査しています。
アパートローン審査の本質
銀行ごとに担保評価のやり方、家賃収入の評価のやり方、返済比率等、審査項目への考え方は異なります。
個別の評価のやり方は各銀行の方針がありますが、大前提として銀行は「貸したお金が返ってくるか」を審査しています。
銀行としてリスクが高いと感じれば金利を高くして対応します。
スルガ銀行の件で考えれば金利は3.5~4.5%のケースが多いでしょうから、リスクの高い案件にリスク回避のため、高い金利で対応していたことになります。
貸したお金が返ってくるか審査してリスクに応じて金利を設定するというのは、お金を貸す側の対応としては当然のことです。
銀行は慈善事業ではないので、貸したお金に利子がついてが返ってくるかが重要ですから、投資家が儲かるかどうかは審査していないだろうと思います。
担保評価を積算評価(土地建物のコスト)で判断する銀行が多いことが、銀行は物件の収益性にはさほど興味がないことを表しています。
銀行は投資家が投資に失敗したら、土地建物の原価で物件を処分して返済しきれないお金は、給与収入で返してくれればいいので、物件の収益性はそれほど重視されないのです。
物件の担保評価さえ良ければ、誰でも融資OKとならないのは、アパートローンは物件への融資ではなく大家さん(人)への融資だからです。
返済財源の家賃とその人の返済能力も審査しているからということです。
このブログで「銀行の融資が受けられる=優良物件ではない」と度々申し上げているのは、銀行にとっては、物件の優劣や収益性は重要ではなく、貸したお金が返ってくることが重要だからです。
「銀行は投資家の投資の成果ではなく、貸したお金が返ってくるかどうかを審査している」
と考えれば、高い金利のスルガ銀行からしか融資を受けられなかったシェアハウス投資の被害者は、もう少し慎重になれたのではないでしょうか。
不動産オーナーは不動産賃貸業の事業者であり消費者ではありません。
これから融資を利用して物件を買おうと考えている人は、経営者の目線で事業計画や契約内容をしっかり分析して「フルローンが利用できる=投資は成功する」という考えは捨ててください。