アパート経営の採算性を表す指標として「利回り」があります。
投資対象の不動産の価格と、そこから得られる賃料収入との関係で表され、次のような2つの利回りがあります。
表面利回り(%) = 年間の総収入÷総投資額×100
実質利回り(%) = (年間の総収入-経費)÷総投資額×100
販売図面やネット広告などに書いてあるのは「表面利回り」です。
実質利回りは、仲介会社などから前年の経費を確認したり、経費がこのくらいはかかるだろうという予測の基に計算をします。
この経費(アパート・マンション経営の支出)の大小が不動産投資の収支に大きく影響します。
この記事では、アパート・マンション経営の経費(支出)について説明します。
目次
1棟アパート・マンション経営の経費
1棟を所有するタイプのアパート・マンション経営にかかる経費は以下のものです。
①税金
固定資産税・都市計画税・不動産取得税※・登録免許税※・所得税・住民税など
※物件の取得年のみに必要
②損害保険料
事業に要する火災保険・地震保険の掛け金で当年度分
③修繕費
建物、設備等の修理代金や原状回復費用など
・大規模修繕
国交省のマンションの修繕積立金に関するガイドラインでは、15階未満、延べ床面積5,000㎡未満の建物の場合、1㎡あたり208円が目安としています。
これを目安に、賃料の3~5%程度は積みたてておく必要があります。
・原状回復
入居期間や部屋の広さ、室内の状況によって異なります。
④ローン返済
ローンを利用している場合
⑤地代・家賃
借地の場合の賃料
⑥手数料
不動産会社への入居者募集・契約更新に関する手数料など。
⑦委託管理費
不動産会社へ支払う管理費など
入居者や家賃の集金など、賃貸管理は収入の5%程度が一般的。
その他に、実費で清掃費用など
⑧各種点検費用(建物の規模・設置状況により異なる)
・消防点検(建物の規模により3~10万円程度)
・受水槽(水量によって3~10万円程度)
・エレベーター(月額2~5万円程度、契約形態により異なる)など。
⑨水道光熱費
共用部分の水道料・電気料・ガス料など。
⑩広告宣伝費
入居者募集広告に要した費用など
客付仲介会社への報酬化しており地域によって異なる。
賃貸需要の高い地域ではかからないこともあります。
賃貸需要の低い地域や競争の激しい地域では賃料の2~3ヶ月分が必要となる場合もあります。
区分所有のマンション(1室)の経費
①税金
②損害保険料
③管理費・修繕積立金
管理組合に支払う管理費・修繕積立金。
区分所有のマンションは、管理組合に支払うので、自分で積み立てる必要はありません。
④修繕費
専有部分の設備等の修理代金や、原状回復費用など
⑤ローン返済
⑥地代・家賃
⑦手数料
⑧委託管理費
⑨広告宣伝費
経費率は地域差に注意
シミュレーションをする時に、家賃に対する経費の割合を、一律で考えてしまう人がいます。
広告費は地域によって相場に差がありますし、建物の規模によっては各種点検費用が必要になる可能性もあります。
東京と地方の比較をすると、同じ面積でも家賃は半分というのはよくあることです。
同じ面積なら、同じ原状回復工事をすれば、同じ費用がかかります。
物価の差などを考慮しても、地方だから原状回復費用が半額ということはないでしょう。
例えば、月額の賃料が50万円で同スペックの1Kタイプのアパートが東京と地方にあるとします。
東京の家賃が5万円だとしたら、10室のアパートということになります。
家賃が半額だとすると、地方都市の物件は20室のアパートです。
年間10%の入居者が入れ替わるとしたら、東京のアパートは1室、地方のアパートは2室入居者の入れ替えがあります。
単純に原状回復や新規入居者の募集の経費は、東京の倍かかることになります。
極端な例をあげましたが、地域の賃貸需要や入居者の属性など、実態にあった経費割合を選択する必要があります。
アパート・マンション経営は投資ではなく事業
不動産投資はお金を投入して終了ではなく、購入後の運営で収支が大きく変わる事業的な面があります。
賃貸物件を所有した瞬間から「不動産賃貸業」という事業が始まります。
家賃収入が入ってくるので比較的安定していますが、事業の継続のためには物件の管理・修繕のための支出や、トラブルが起きた時のリスク管理のための保険の支出があります。
予想外の設備の故障などのための資金の確保も必要となります。
この辺りは他の業種の事業と同じ部分があると思います。
ローンが組めるから、利回りが高いから、積算評価が高いからといった条件だけでなく、その物件の運営には、どのような費用が必要なのか、必ず事前に確認をしてください。
副業や投資ではなく、事業をするという意識をもって物件を購入することが、失敗を防ぐ手段になります。