4月19日、参議院本会議で改正住宅セーフティネット法が可決、成立しました。
この法律は高齢者や所得の低い子育て世帯向け賃貸住宅として、空き家・空き室を登録し、情報提供する制度を創設するものです。
登録制度は、空き家の所有者が賃貸住宅として都道府県などに届け出をします。
高齢者らの入居を拒否しないことなどを条件とし、都道府県は登録物件の情報を入居希望者らに広く周知します。
新たな住宅セーフティネット制度の概要
この法律にアパートオーナーへのメリットはあるのでしょうか。
この記事では、改正住宅セーフティネット法の概要、不動産投資への影響について説明します。
目次
改正住宅セーフティネット法の概要
①セーフティネット住宅登録制度
住宅確保要配慮者の入居に限定はしないが、拒まない賃貸住宅
登録済みの住宅の情報を開示することで、入居を促進しやすくなります。
登録した住宅では、すべての住宅要配慮者を対象にしなくても良いので、高齢者や被災者のみ入居を拒まないというような選択ができます。
住宅確保要配慮者に限定した「専用住宅」として登録した賃貸住宅
住宅確保要配慮者に限定した、「専用住宅」として、賃貸住宅を自治体に登録すると、最大4万円までの家賃補助と、家賃債務保証料最大6万円までの補助が受けられます。
登録住宅の耐震改修や、バリアフリー化の費用の助成を受けることもできます。
(最大200万円)
②登録住宅の改修・入居への経済的支援
改修支援
入居者への経済的支援
家賃と家賃債務保証料の低廉化に対する補助があります。
家賃については国・自治体から最大月額4万円の家賃補助が最長10年間適用されます。
保証料については、家賃債務保証事業者の保証を住宅金融支援機構が引き受けることで保証料の低廉化しています。
③要配慮者の入居支援
都道府県が、居住支援活動を行うNPO法人等を、賃貸住宅への入居に係る情報提供・相談、見守りなどの生活支援、登録住宅の入居者への家賃債務保証等の業務を行う居住支援法人として指定することが可能となりました。
これからの日本の人口構成とアパート経営
平成32年には、65才以上の高齢者の人口は29%を超えます。
「賃貸住宅を検討する3人に1人は高齢者かも」という時代が来るのです。
平成27年の統計によると、比較的高齢世帯の少ない東京都でも、22%は65歳以上の高齢者です。
日本賃貸住宅管理協会が、賃貸住宅の大家の意識を把握するため、去年12月からことし2月にかけて行った調査によると、「高齢者の入居に拒否感がある」と答えたオーナーは
約60%というデーターがあります。
また、1人暮らしの高齢者の入居を制限をしていると答えた大家は全体の14.2%、高齢者のみの世帯の入居を制限している大家は13.4%でした。
これから、人口は減り住宅は余っていく傾向があります。
よほど賃貸需要の高いエリアでなければ、満室でアパート経営をすることは難しくなるかもしれません。
入居審査で、高齢者や生活保護受給者などを受け入れないオーナー様もたくさんいらっしゃいます。
これからは、住宅が余り、住宅確保要配慮者を拒んでいることはできなくなるかもしれません。
住宅確保要配慮者を受け入れるためのリスクヘッジ
上記ニュースで、入居制限をしている大家は「家賃支払いに対する不安」「屋内での死亡事故の不安」を理由としています。
住宅確保要配慮者を受け入れるのであれば、この不安を解消しなければなりません。
家賃の支払いに対する不安
今回の改正法案に、住宅確保要配慮者の入居円滑化に関する措置として、家賃債務保証の円滑化があげられています。
住宅金融支援機構が家賃保証保険を引き受けることで、保証会社の負担を減らし、家賃保証会社の利用をしやすくします。
屋内での死亡事故の不安
警備会社やガス会社などが、各種の見守りサービスを行っています。
他には、火災保険の特約を利用して事故に備えることもできます。
改正住宅セーフティネット法の不動産投資への影響
改正住宅セーフティネット法の登録住宅制度を活用し、住宅確保要配慮者を積極的に受け入れることで、空室が解消される可能性があります。
法改正により、家賃滞納などのリスクがあった低所得の入居者も、家賃低廉化措置により、安心して受け入れることができます。
「専用住宅」として登録し、補助制度に該当する改修工事を行えば、改修工事費用の補助を受けることができ、通常より修繕を行いやすくなります。
長期的に考えれば日本の人口は減り、住宅は余る時代が来ます。
すでに空室に悩んでいる物件は、法律の整備を機に入居審査の見直しや、住宅セーフティネット法の登録住宅制度を活用を検討してみる必要があるかもしれません。