不動産投資で払った消費税が戻ってくる「消費税還付」という制度をご存知でしょうか?
不動産投資のセミナーなどでは、「1物件1法人」のスキームと共にとりあげられていることが多いので、耳にしたことがあるかもしれません。
賃貸アパートやマンションなどを売却すると、消費税が課税されます。
世の中の投資用不動産の建物部分には、消費税が課税されているのです。
(土地部分には消費税はかかりません)
建物価格が2,000万円だとしたら、160万円の消費税が物件の価格に含まれています。
この160万円の消費税が、一定の条件を満たせば戻ってくるというのが、「消費税還付」です。
この記事では、不動産投資の消費税還付の方法と注意点を説明します。
目次
消費税が還付されるための条件は?
消費税は、課税売上に含まれる消費税から、仕入れや経費の支出に含めて支払った消費税を差し引いて、引ききれなかった金額があるときは、その金額が還付されます。
消費税還付の手順は以下の通りです。
①消費税課税事業者選択届出書の提出
届出書の提出は物件取得前に行います。
②建物の購入(完成)月に、消費税の非課税売上を発生させない
(=家賃を受け取らない。)
決済日を月末に設定し、日割家賃は受け取らないよう調整します。
③建物の購入(完成)月に、消費税の課税売上を発生させる
自販機・物販・駐車場収入などの課税売上を発生させます。
④消費税の確定申告書(還付申請書)を提出する
⑤還付申告年を含めて、3年間の課税売上割合の推移に注意しながら、課税売上を計上し続ける
不動産投資の消費税還付は難しい
①一度還付された消費税を返還させられる「還付金返納」
消費税還付で一番面倒なのが、「課税売上割合が著しく変動したときの調整」です。
これは消費税還付のためだけに、一時的に課税売上を発生させて、還付を受けることを防ぐためのものです。
※課税売上割合とは課税売上/(課税売上+非課税売上)です。
・還付を受けた初年度の課税売上割合を計算する
・還付を受けた年を含む3年間の通算課税売上割合(総売上3年分/課税売上3年分)を計算する
・この➀②の変動率と、変動差を数値化して変動率50%以上、かつ変動差5%以上となった場合、還付金は返納しなければならない。
課税売上を発生させるためには、金の取引を行うことが多いようです。
②融資を受ける金融融機関によっては、消費税還付ができない
金融機関によっては、資産管理会社への融資の場合に、「不動産賃貸業専業とすること」を条件とされる場合があります。
その場合には、課税売上を発生させるための金の取引など、不動産賃貸業以外の行為ができないため、消費税還付はできません。
③税務調査の対象になりやすい
租税回避行為とみなされやすい消費税還付は、税務調査の対象となりやすくなります。
還付金が多ければ、確実に税務調査がきます。
不動産投資で消費税還付を行う場合の注意点
①消費税還付は必ず税理士に頼む
課税売上のコントロールや申告書の作成、税務調査対策など難易度の高い部分があります。
報酬はそれなりに高いですが、必ず消費税還付に詳しい税理士に依頼しましょう。
②課税売上のコントロールに手間がかかる
課税売上のコントロールのために、不動産賃貸業以外の課税売上を発生させなければなりません。
定期的に金の取引などを行う必要があり、時間と手間がかかります。
③不動産投資での消費税還付には、リスクがあることを認識する
・失敗すれば還付された消費税は、返納しなければなりません。
・課税売上を発生させるために行う、金の取引は元本割れの可能性があります。
金の取引業者への販売手数料の支払いなども発生することもあります。
・不動産の消費税還付は、租税回避行為として、次々と道を塞がれています。
抜け道はあっても、税務署には目をつけられやすいため、今後の不動産賃貸業運営時に、調査を受ける可能性もあります。
消費税還付をやるかやらないかは、投資家個人の考え方次第ですが、気をつけてやらないと課税売上を発生させるための事業での損失や、還付金返納など大きなダメージを受ける可能性があります。
くれぐれもご注意ください。