6月3日のクローズアップ現代で「まさか、家を失うとは… ~広がる 住居喪失クライシス~」というタイトルで新型コロナウイルスの影響で家を失う人たちが特集されました。
ネット上でも「日本がデフォルトになったら金利上昇で住宅ローン破綻者が続出」「住宅ローン破綻が大量発生する未来が迫っている」などといった記事や投稿が増えています。
この記事では、2つの住宅ローン破綻シナリオを検証し、破綻しないための対策を考えます。
目次
国債暴落の金利上昇で住宅ローン破綻
コロナショックで変動金利が上昇し、ローンの支払いが困難になるというシナリオです。
日銀はコロナウイルス感染拡大に対応するために追加の金融緩和を行いました。
通常は金融緩和を行うとインフレ率が上昇し、景気回復が起きて金利は上昇します。
住宅ローン破綻と金融緩和を結びつけている説は、通常の金融緩和の効果ではなく、金融緩和の度が過ぎるので国債が暴落するというものです。
日銀の行っている金融政策
①長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)
短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。
長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。
②ETFおよびJ-REITの購入
それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う
③中小企業などに対する新たな資金供給
CP・社債等の買入れ、政府の緊急経済対策に基づく実質無利子・無担保融資を行う金融機関への支援。
変動金利上昇の可能性は?
日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続すると公表しています。
日銀の政策は国債を買ってお金を供給する金利操作を行っていますから、この方針が変わらない限り金利上昇の可能性は低いでしょう。
金利が上昇するとしたらコロナショック、消費税増税の悪影響から回復し、2%の物価上昇が実現したときでしょう。
住宅ローン破綻と金融緩和を結びつけている説は、日銀の金融政策によって国債が暴落し、現状のデフレ状態からゆるやかなインフレを通り越してハイパーインフレで金利上昇というものですが、日本国債のCDS保証率(約0.2%)を見る限りでは、今のところその心配はなさそうです。
〇 CDS保証率
CDSとは対象先の信用リスクを取引するデリバティブ。破綻した時に備える保険のようなもの。一般的にCDSの保証料率は2%が危険水準と言われている。
この種の国債暴落説は金融緩和の度に言われているものですから、変動金利で住宅ローンを借りているからといって慌てて固定金利に変更する必要は現時点ではなさそうです。
滞納→優遇金利終了で住宅ローン破綻
ネット上でもコロナウィルスの影響で収入が減ってローンを延滞すると、金利優遇の対象外になるという記事が増えています。
平時なら延滞をすれば金利優遇対象外となりますが、今はコロナウィルス感染拡大という非常時です。
金融庁は住宅ローンについては、これまで、顧客のニーズを十分に踏まえた条件変更等について、迅速かつ柔軟に対応するよう要請しています。
https://www.fsa.go.jp/news/r1/ginkou/20200527-ka.pdf
全銀協会長(三菱UFJ銀行三毛頭取)も以下のような発言をしています。
住宅ローンや銀行カードローンなどの返済にお困りの個人の方へ相談窓口を設置している。さらに、自然災害の対応と同様、新型コロナウイルスの影響により返済猶予などを実施した場合は、延滞の情報登録をしないといった信用情報上の措置をとるよう、会員向けに周知したところである。
全銀協ホームページ
金融庁の要請をふまえて金融機関は4月末の住宅ローンに係る条件変更の実行率が 98%(銀行)となっており、謝絶された案件は29件(0.4%)です。
https://www.fsa.go.jp/ordinary/coronavirus202001/kashitsuke/20200528.pdf
参考 住宅ローン相談窓口
銀行は破綻させたいわけではありませんから、コロナウイルスの影響による収入減などでローンが払えず家を売ろうと考えている人は、売却するより支払い猶予の相談をしましょう。
何の相談もなく滞納をするのは絶対にやめましょう。
住宅ローン破綻をしないための対処法 まとめ
日本は新型コロナウィルスの感染抑止のため経済を止めている状態です。
感染抑止にはある程度成功している状態になりつつあるので、これから経済を動かす段階に変わります。
通常の不況と違うのは、感染抑止のために経済活動を意図的に止めているという点です。
これから経済活動が再開されて、経済が通常の状態に戻れば、減ってしまった給与収入の回復が見込めます。
報道やネットの情報などは不安をあおるような内容が多いですが、住宅ローンに不安のある人は銀行に相談をして、支払いの猶予など条件の変更を相談をしましょう。