7月30~31日に行われた、日銀の金融政策決定会合で大規模な金融緩和のさらなる長期化に備え、副作用に配慮した政策の枠組みにすることを決めました。
日銀の政策は、住宅ローンやアパートローンの金利動向に影響を及ぼします。
この記事では、今回の金融政策決定会合での、日銀の政策変更による住宅ローン・アパートローン金利への影響について説明します。
目次
長短金利操作への政策変更
短期金利をマイナス0.1%とし、長期金利を0%程度に抑える全体の枠組みは維持しつつ長期金利についてはこれまで許容していた水準の倍に当たる0.2%程度まで金利上昇を認める考えを示しました。
短期金利についてはマイナス金利を適用するとの表現に変化はないものの、マイナス金利が適用される政策金利残高を減少させるとしています。
短期金利についても多少の金利上昇は可能性があります。
金融政策決定会合の1週間前に日銀が副作用緩和の政策をとるという報道がされると、市場では長期金利が0.03%から0.1%まで上昇しました。
政策発表後は発表直後は0.06%程度まで低下しましたが、翌日には0.12%程度まで上昇、8月13日現在0.09%(Bloomberg)となっています。
※長期金利
期間が1年以上の金融資産の金利のこと。
一般的には10年国債の利回り。
※短期金利
満期までが1年未満の期間の短い資金を貸し借り金利。
短期国債、銀行間で資金繰りをするコール取引など。
住宅ローン・アパートローンへの影響
①住宅ローンへの影響
・変動金利
変動金利は短期プライムレートに連動します。
短期プライムレートに影響を及ぼす短期金利は現在も0.1%のマイナス金利です。
今のところ変動金利の上昇はなさそうです。
・固定金利
長期固定金利は長期金利に連動します。
7月末に長期金利が上昇した影響で8月の長期固定金利は横ばいか上昇しています。
8月の長期固定金利が7月末の金利上昇の影響なら9月は横ばいの可能性が高いです。
7月末の金利上昇の影響が8月の金利に反映されていなければ多少の上昇はあるかもしれません。
②アパートローンへの影響
住宅ローンと違いアパートローンの金利は公開されていないことが多く、金融機関に問合せなければ分かりません。
アパートローンの金利は、ほぼ横並びの住宅ローンと違って、各金融機関が独自に設定しています。
例えば、三井住友銀行のアパートローンは短期プライムレートを基準とした変動金利プランがあります。
貸出金利は1%~1%後半となる場合が多く、借受人の資産背景等によって金利が変わります。
三井住友銀行アパートローン
一方で、静岡銀行は建物の耐用年数を超えた期間の融資が可能な商品設計のローンを展開しており、他行よりもリスクをとっています。
その分、金利の設定も他行よりも高め(3%台)となっています。
※2019年8月現在は募集停止
不動産も銀行もリスクが高ければ、リターン(不動産は利回り、銀行は金利)を高くしてリスクヘッジします。
それに加えて、アパートローンはあくまで事業者融資ですので、案件ごとに金利が決まります。
それぞれの銀行で独自の商品があるアパートローンも基準となる金利は短期プライムレートや長期金利に連動している場合があるので、金融政策の動向には注意しなければなりません。
これからも金融政策の動向には注視が必要
日本銀行は「2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。」としているため、すぐに住宅ローン・アパートローンともに金利が急上昇する可能性は低いだろうと思われます。
アメリカ、ヨーロッパともに景気が回復しつつあり、中央銀行による金融機関緩和は縮小に向かっています。
景気の動向によって、金利は上下しますのでローンを組む時には「もし、金利が上昇したら」というリスクも考慮したうえで借入金の額を決めて、無理のない返済計画をたててください。