不動産投資の収支は税金との戦いです。
なぜなら不動産投資の最大の経費は税金だからです。
不動産投資の大きな転換期にデッドクロスというものがあります。
「デッドクロス」というのは、株式投資の用語で株価の中期の動きを短期の動きが下回った時をデッドクロスと言います。
不動産投資では、いろいろな定義がされているようですが、減価償却費よりも元金返済が増えて逆転するポイントが「デッドクロス」として使われることが多いようです。
「デッドクロス」を迎えると税金が大きく増え資金繰りが苦しくなります。
この記事では、デッドクロスの仕組みとデッドクロスで破綻をしないための対策を説明します。
目次
デッドクロスが起きる仕組み
デッドクロスが起きる要因には「減価償却費」と「融資金の返済」が深く関わっています。
①減価償却費がなくなる
不動産を買うときは、通常、土地と建物を買うことになります。
土地は古くなっても価値が下がりませんが、建物は古くなればに価値が下がります。
そこで耐用年数に応じて、購入した建物価額の価値が減った分を経費計上が出来るというのが減価償却の考え方となります。
耐用年数が経過すれば、価値はゼロになるように減価していくので耐用年数経過後は経費計上はできなくなります。
②融資金の返済の利息割合減
融資金の返済形式は「元利均等返済」とすることが多いです。
元利均等返済とは、月々の返済額が一定になるように元金と利息の割合を調整する方式で、借入当初は利息の返済が大きく、元金が少なくなります。
融資金の返済のうち、経費として計上できるのは利息部分のみです。
元利均等返済の場合、年数が経過して返済が進むと、利息の割合は少なくなります。
利息返済額が減り、元金の返済増えると計上できる経費が減ります。
経費の扱いについては過去の記事も参考にしてください。
アパート経営の必要経費と税務上の取扱い 物件取得時
アパート経営の必要経費と税務上の取扱い 物件保有期間
③デッドクロス発生
経費にできない元金返済部分が増加して、経費にできる減価償却費よりも金額が大きくなった時、デットクロスが発生します。
実際に現金は出ていかないのに、経費にできる減価償却費よりも、実際に現金が出ていくのに経費にできない返済元金が上回ってしまうのです。
どんな物件でも、融資を利用する限りデッドクロスは訪れます。
デッドクロスが発生すると、とても恐ろしいことが起きているように思われがちです。
実際に起きていることは税金の負担が増えているだけです。
デッドクロスが発生すると、全員破綻するわけではありません。
税金の負担が増えても、キャッシュフローが赤字にならない収支で物件を購入していれば破綻することはないのです。
デッドクロスで破綻しないための対策
デッドクロスが発生しても破綻しないための対処方法があります。
①頭金を多くいれて融資金を減らす
購入時に頭金を多くして融資金の返済額を減らせば、元金返済が減価償却費を上回る時期を遅らせることができます。
返済額が少なくなれば、経営に柔軟性が持てる効果もあります。
②デッドクロスの前に資金を貯めておく
手残りの多い投資初期の時期にお金を貯めておいて、デッドクロスが発生した時に備えておけば、マイナスの補てんや繰り上げ返済などの対策がとれます。
③デッドクロスが発生したら売却して資産を入れ替える。
デッドクロスが発生した物件を売却して、新たに物件を購入すれば、デッドクロスを先送りできます。
しかし、デッドクロスが発生した時に、不動産市況が悪ければ、希望の価格で売却できず残債が返せない可能性があります。
④経費を作る
減価償却のできる物件を購入する、リフォームをする、家族に給料を払う(青色申告専従者給与)の方法で計上できる経費を増やします。
実際に支出を伴うので、ある程度の資金余裕がなければできない対応策です。
⑤融資の借り換え
融資の借り換えをすると利息が多く元金が少ない返済1年目の状態に戻れます。
借り換えには金融機関の手数料や、登記費用などの費用がかかる可能性があります。
デッドクロス対策のまとめ
上記の③④⑤はリスクがあります。
③は売却時の価格下落リスクがあります。残債より高く売れるとは限りません。
④はそもそもお金がかかります。
「節税のためにお金を使う」得なのか分かりません。
⑤は元金の減りが遅くなり支払利息が増えてしまいますし、借り換えに諸費用が必要な場合があります。
やはり①②が王道で一番安全な方法です。
デッドクロスが発生して税金の負担が増えても、収支が赤字にならなければ、破綻することはありません。
購入前にしっかりとシミュレーションをしていれば、デッドクロスが発生する時期は分かります。
デッドクロスは事前に分かることで対策ができるのですから、多少収支が悪化しても、慌てなくて済むような資金計画をたてて、安全な投資をして下さい。