金融庁が2018事務年度の金融行政方針を公表しました。
金融行政方針概要
金融行政が何を目指すか、いかなる方針で金融行政を行っていくかを公表するものです。
銀行業界の今後の動向を予測するためにも重要なレポートです。
金融行政方針には資産形成や投資用不動産融資にかかわる記載もありますので、この記事で内容を確認したいと思います。
目次
家計の安定的な資産形成の推進
はっきりと「家計の安定的な資産形成の推進」とレポートに書いてあります。
金融庁は、国民の資産運用による資産形成を推進する方針なのは間違いありません。
金融庁が投資信託による資産形成において問題としているのは、投資信託平均保有期間の短期化と、営業現場での期末の収益目標を意識したプッシュ型営業の可能性です。
期末になると、「手数料稼ぎのために投資信託を買いかえさせているのでは?」ということです。
以前、「銀行の投資信託、46%の個人が損失」という報道がありました。
金融庁が、主要行9行と地方銀行20行の窓口で投信を買った客全員の今年3月末と購入時の投信の評価額を比べた。顧客が払う手数料も引き、実質的な「手取り」を試算すると、46%の人の運用損益がマイナスで、損をしていたという。購入した時期にもよるが、株価が上昇基調で比較的「損をしにくい」環境のなかで、比較的多くの人が損をしていたことになる。 -2018年7月5日朝日新聞デジタルより-
金融庁としては、国民の資産形成を推進しています。
長期投資による資産形成ということで、投資信託の購入を勧めていますが、銀行を窓口にして投資信託を買うと損をする人が多いということで、「顧客本位の業務運営をしているかチェックするぞ」と銀行に釘を刺しているようです。
長期分散投資という面で、つみたてNISAについても言及しています。
2018年1月開始のつみたてNISAは、20代~40代が口座開設者の約7割であり、新たな投資家層の拡大に寄与。
ただし、認知度は40%程度であり、利用は一部の層にとどまる現状。制度面・普及面の双方において、更なる取組みが課題。
投資による資産形成を推進している一方で、金融リテラシーの向上が必要と指摘しています。十分な投資知識を身につけることが身を守るために大切ということです。
投資用不動産向け融資
アパート・マンションやシェアハウス等を対象とした投資用不動産向け融資についても指摘されています。
①金融機関・悪質な持込不動産業者双方が関与した、入居率・賃料、顧客財産・収入状況の改ざん
②抱き合わせ販売といった、顧客保護の観点から問題ある事例が発生
投資用不動産向け融資に関して「横断的アンケート調査や検査も活用しつつ、以下を中心に深度あるモニタリングを実施する。」としています。
・顧客の返済可能性を考慮した融資実行時の審査、持込不動産業者が提示した価格の検証や、空室率・賃料水準の推移の把握を前提とした期中管理をはじめとする融資審査・管理態勢
・ 顧客の不動産購入目的を踏まえた借入の合理性の検証や、賃料収入に関するリスクの説明等、顧客保護等管理態勢
・不当な抱き合わせ販売を防止する等の法令等遵守態勢
融資実行後の管理を適正に行っているかという点も検査項目となっているため、既存の融資についても検査対象となる可能性があります。
すでに融資された一物件一法人スキームなども銀行にチェックされる可能性が出てきました。
知らないふりをしていた銀行も、金融庁からチェックされる前に、一括返済を迫ることもあり得ます。
悪いことをしてしまった投資家は、いつばれるかビクビクしながら暮らすよりも、早めに銀行に謝ってしまうか、物件を売却してしまう方がいいかもしれません。
投資をするなら正しい知識を学んでから
投資信託にしても、投資用不動産にしても、損をしたりだまされる人は、勉強不足というのが根本にあります。
投資信託は長期的に保有しなければ、資産形成のための手段にはなりません。
手数料の高い投資信託を買ってしまうのも、知識が足りていないからです。
投資用不動産にしても、リスクの高い物件に投資をしてしまったり、おかしなスキームを使ってしまうのは、目先の数字ばかりに注目してしまい、長期間運営するという視点が足りず、長期間の運用の結果、どうなるかが分かっていないからです。
金融庁の行政方針には、資産形成の推進と金融リテラシーを向上させる必要性が指摘されています。
これから投資をする人は、ある程度の知識を習得するか、信頼できるアドバイザーを見つけてから投資を実行するようにしてください。