不動産投資を勧める不動産業者や不動産投資セミナーなどで、融資を受けるためのテクニックとして、違法な方法でオーバーローンを斡旋する不動産業者が増えています。
注意喚起にもなると思いますので、どのような方法なのか解説しようと思います。
この記事では、犯罪行為になる可能性もある違法なオーバーローンの方法を解説します。
目次
オーバーローンとは?
「お金がなくても不動産投資ができます。」「年収が低くても不動産投資ができます。」などと広告をしている不動産業者を見かけます。
自己資金がゼロでも不動産投資ができるのか?
可能性はゼロではありませんが、首都圏では、ほぼ不可能です。
物件購入には経費がかかります。
仲介手数料・登録免許税・金融機関の融資手数料・火災保険・不動産取得税などです。
物件の価格+諸経費までまとめて借りようというのがオーバーローンです。
しかし、多くの銀行のローン商品説明を見ると「購入価格の範囲内、当社評価額の90%以内」など、融資金額の上限が記載がされていると思います。
多くの銀行は、物件価格以上の融資はしません。
資産内容の良い人や、長期間安定した不動産賃貸業の経営実績のある事業者は、例外的に諸費用分も借りることができるかもしれません。
金融機関では、「お金はあるけど使わない人」と「お金がないから使えない人」とは、同じ金額のローンでも審査結果が全く違うのです。
それでは、自己資金ゼロでオーバーローンを組むためにはどんな手法を使うのでしょうか?
自己資金ゼロでオーバーローンを組む方法(違法行為)
①二重契約によるオーバーローン
古典的な手法ですが、よく使われる方法が売買契約書の2重作成です。
例えば、物件価格の90%まで融資が組める物件があり、物件価格は5,000万円とします。
この物件を購入するには、5,000万円の10%の自己資金(500万円)+諸経費(約500万円)が
必要です。
もし、この物件が6,200万円だったとしたら、90%は5,580万円です。
この手法では、本当は5,000万円の物件を、6,200万円で買ったことにする銀行提出用の契約書を作るのです。
本来の5,000万円の契約書と、銀行提出用の6,200万円の契約書が存在することになります。
銀行は物件の価格が6,200万円だと思い、価格の90%を融資します。
実際の物件価格は、5,000万円なので差額の580万円を諸費用の支払いにあてて、自己資金ゼロで物件の購入が終了します。
金融機関に分からないように、価格を変更する合意書を作成して、二重契約と同じ効果を持たせることもあります。
②手付金領収書や自己資金のエビデンスの偽造
自己資金をたくさん持っている人は、融資を受けやすい傾向があります。
銀行としては、1億円の預金がある人に1億円貸すことは、100万円の預金がある人に2,000万円貸すよりも、リスクがないように見えるのかもしれません。
多額の手付金を払ったために、口座の残高が少ないようにみせかけるため、手付金の領収書や売買契約書を偽造したり、通帳のコピーを偽造したり、一時的に不動産業者からお金を借りて、通帳の残高を増やすなどのエビデンスの偽造を、融資テクニックと称している不動産業者や投資家がいるようです。
最近では、ネットバンキングのページを偽造するなど手口が巧妙になっています。
どの方法も、違法行為であることは間違いなく、融資テクニックと言えるようなものではありませんが、このような方法を希望する投資家はたくさんいるのです。
違法なオーバーローンは単なる投資の失敗では済まない可能性も
違法なスキームでオーバーローンを受けて、自己資金を使わずに投資ができると、得した気分になる人がいるかもしれません。
違法行為を指南してくれた不動産業者や、不動産コンサルタントに感謝している投資家もいるかもしれません。
しかし、上記のようなオーバーローンで自己資金を使わず物件を買えても、違法行為で引き出した融資であることは間違いなく、大きなリスクを背負うことになります。
金融機関に事実と異なる書類を提出し、融資金を引き出す行為は詐欺罪にあたり、過去に逮捕者も出ています。
犯罪になるだけでなく、金融機関からは、契約の信義則違反で融資金の一括返済を求められます。
一括返済に足りない分は、持っている資産で払うしかありません。
資産が足りず、不足分を払えなければ、自己破産するしかありません。
自分の詐欺行為は100%ばれないと言い切れますか。
もし、違法な行為がばれて告発されたら、勤めている会社はあなたを解雇するでしょう。物件も職を失って、何のために投資をしたのでしょうか。
詐欺に加担した業者は助けてくれません。
倒産したり、廃業されてしまえば、業者の責任追及もできなくなります。
このような不動産業者の誘いに乗って、不法行為をすることは絶対にやめて下さい。
不動産投資で、空室や滞納以上にリスクが高いのは、資産と職を失い前科がついてしまうことではないでしょうか?
「自己資金不要で不労所得を得られる」などの耳障りの良い話には、必ず裏があります。
だまされないように気をつけてください。