先日、宅建士の免許更新講習に参加しました。
そのなかに不動産の価格査定についての講習がありました。
不動産には査定方法がいくつかあり、客観的な数値が査定できる仕組みがあるのですが、一般的には査定方法はあまり知られていません。
この記事では、一般の消費者には分かりにくい不動産価格はどんな方法で査定されるのか説明します。
目次
不動産の用途別に3つの価格評価法がある
①原価法
同じような物件を作るには、いくら掛かるのかを計算し、建物が老朽化していたり設備が劣化している場合には、その分だけ評価額から差し引くことで、評価額を求める方法です。
金融機関の担保評価や保険価格の算出などによく使われる評価方法です。
中古住宅の建物価格は、メンテナンス状況により大きく異なるのですが、現状ではひとつひとつの建物の価値に合わせて算出されているケースは少なく、築10年なら新築時の50%、築20年を超えると価値はゼロなどというように、おおまかに算出されていることが多いようです。
算出されるのはコストを反映した価格なので、市場で売買する価格とは別の話となります。
②収益還元法
不動産から得られる家賃などの収益を将来にわたって算出し、それを現在価値に割引して評価します。
収益還元法にはDCF法と直接還元法の2つがあります。
DCF法は中長期的な収益で不動産の価値を判断します。
直線還元法は1年間の収益から不動産の価値を判断するため、一般的にはDCF法で評価された価格の方が精度が高いと言われています。
DCF法
収益資産を持ち続けた時に、その資産が生み出すキャッシュ・フローと保有期間終了後の売却予測価格を現在価値に割り戻して足し合わせて評価額を算出します。
将来の予測をしながら評価額を算出するため、根拠となる数値設定が非常に難しいことが難点です。
直接還元法
収益資産から得られる1年間の純収益を一定率で割り戻して、直接現在価値を求める方法です。
収益還元法は、不動産が生み出す収益に着目した査定方法なので、アパートやテナントビルなどの賃貸に出されている不動産の評価額算出に利用されています。
収益性とは、無関係の建売住宅や自己居住用分譲マンションの査定において、収益還元法はほとんど使われていません。
③取引事例比較法
原価法や収益還元法といった評価方法と異なり、その不動産単体ではなく、近隣の他の不動産との比較で評価額を求める方法です。
近隣の不動産の過去の取引を基準とし、必要に応じて補正・修正や地域・個別物件の要因を比較して不動産の価格を算出します。
収益を出すことを目的としていない自己居住用住宅の査定に適しており、その地域の相場にあった取引価格を算出できるという利点もあります。
日本の不動産市場は透明性が低く、事例の蓄積が少ないため過去の売買事例が見つからないことがあります。
事例が少なければ平均値の算出が難しく、的確に比較をおこなうのは困難なケースもあります。
投資用不動産の価格査定はどの方法を使う?
不動産の価格は、上記の手法によって求められた価格を調整して、最終的に査定価格を決定します。
投資用不動産の実務では、金融機関は原価法もしくは収益還元法、不動産業者の価格査定では収益還元法と取引事例比較法を合わせたものを使っていることが多いと思います。
原価法・収益還元法どちらも査定に用いる指標によって、結果として示される金額に大きく違いがでます。
原価法であれば用いる土地の価格や建物の価格によってです。
土地の価格に公示地価を用いるのと、路線価を用いるのとでは、約20%の違いが出ます。
(H28年3月28日の記事をご覧下さい。)
不動産の価格は分かりにくい 同じ土地に4つの土地価格
収益還元法でも収益を何%で割り戻すかによって大きく査定額に違いがでます。
実務では割り戻す還元率を取引事例や競売不動産の落札利回りなどから求めます。
査定のうえでは取引事例は非常に重要です。
何の理由もなく安い物件はない
安い物件は査定の結果、安い価格で売っていて、その価格の算出根拠があります。
査定をした不動産会社が、不動産売買に不見識で間違った査定価格を提示している可能性はゼロではありませんが、通常はきちんと査定をしたうえで、物件を売り出しています。
どのように物件が査定されて、どのくらいが価格交渉できる範囲なのか、ある程度の目安が分かれば問題のある物件を買ってしまうことも、現実的でない価格交渉をして時間を無駄にすることもなくなるでしょう。