過去2回の記事で、アメリカと日本の不動産取引をくらべてみました。

アメリカと日本の比較から、日本の不動産取引の問題点と消費者側が気をつけることを考えてみます。

日本の不動産取引システムの問題点

日本の不動産取引システムの問題点

レインズは有効に使われていない

レインズとは、不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムです。

土地や住宅を売りたい人、買いたい人は不動産業者に相手方や物件の検索を依頼します。この検索はレインズ導入以前は、店頭への貼紙、新聞広告、知り合いの業者での情報交換などに頼っていました。

これでは迅速性に欠け、一部の人にしか情報を紹介できませんでした。
この欠点を改め、広く迅速に相手方や物件の検索を行うためにレインズが導入されました。

レインズには専属専任・専任媒介の契約をした物件を登録する義務があります。
成約をした物件についても成約情報を登録する義務があります。
しかし、どちらも徹底されているわけではありません。

不動産業者の一部では、レインズに登録されている物件は出回り物件で、良い物件はないというようなことが言われています。

広く迅速な対応をするためのシステムが、全く活用されていないことの証明のようなものです。

レインズが活用されない理由としては、違反をしても罰則が緩いことがあげられます。
アメリカのMLSは違反をすると厳罰がありますが、レインズは大手不動産会社の役員など関係者が理事をしているせいか、罰則を科されるケースはほとんどありません。

そのため、違反はなくならず、仲間のみんなが違反をするから罰則もないというのが現状です。

消費者が不動産の情報を得るためのツールがない

路線価・公示地価・固定資産税評価額、どれも実際の売買との関連は低いため参考になりません。
成約事例に基づいた不動産相場を調べられるツールが必要です。

消費者は物件について正確に調べることができない、前述のようにレインズは活用されていないため、未公開物件=優良物件と思い込んでしまいます。
公開されている物件は条件が良くても「出回り物件」だと敬遠する人も少なくありません。

レインズ掲載されていて、広告不可の物件は山ほどありますが、会員専用ページに未公開物件として掲載したり、未公開物件のように見せるために資料を作り直して紹介されている物件はたくさんあります。

未公開物件=優良物件と思い込んでいる人は、実際にはレインズ公開されている物件を未公開物件と思い込んで、それが実際の価値よりもよく見えてしまいます。

情報が少なく、良い物件の価値基準を作ることができないため、こんなことが起きてしまいます。

不動産業界は消費者に不動産資格の情報を知らせる努力が足りない

宅建以外にも、不動産関連の資格や検定があります。
しかし、消費者はどのような資格や検定を受けている営業マンが優秀なのか分かりません。

宅建資格を扱う不動産流通推進センターは、不動産検定や講習を受けろと不動産会社にたくさんメールを送ってきます。
しかし、そんな検定があることを知っている消費者はほとんどいません。
消費者側に知らせる努力をしていないからです。

資格、検定は有料です。時間も取られてしまいます。
不動産について、お金や時間をかけて知識レベルを高めている営業マンがいても、消費者には伝わらないのが現状です。

消費者側も時間をかけて調べなければ、担当者の持っている資格が何の役にたって、どんな知識があるのか分かりません。

不動産取引での消費者の注意点

不動産取引での消費者の注意点

大手志向の消費者

日本の消費者は、大手だから安心と思っている人がたくさんいます。
大手不動産会社にも、優秀な営業マンがたくさんいますが、支店の半数は経験年数が3年未満というようなところもあります。

マニュアル化されている分、安心感はありますが、マニュアルにないことはできない人も多いのです。

中小の不動産会社は、完全に担当者次第となります。
私は、過去にいろいろな不動産会社と取引をしていますが、担当者の業務知識は極端に差があります。

すごく優秀な人もいれば、何の知識もなく年数だけを重ねている営業マンもいます。

消費者は大手でも、中小の不動産会社でも、営業マン個人の力量を見抜けなければ、いい不動産取引はできないのが現状です。

消費者はどうすればいいのか?

ネットの情報をを鵜呑みにしない。

ネットの情報が必ず正しいとは限りません。
医療情報サイトのWELQのことが問題になっていますが、不動産情報サイトにも同じことが言えます。

営業マンと多くのやり取りをする。

インターネットで問合せをすると、たくさんの不動産会社から営業メールがきます。
多くの人は返信をしないようです。

営業マンの資質を判断するためにも、やり取りをしてみて下さい。
まともなやり取りのできる営業マンとは会ってみてもいいと思います。

優秀な営業マンは購入・売却のサポートだけでなく、取引相場を調べてアドバイスをくれたり、アフターフォローにも優れています。
ただの情報屋として不動産の営業マンを判断しないようにして下さい。

自分に都合の良い話があっても立ち止まって考える。

「あなただけに紹介している未公開物件」とか、「優先して公開前の物件を紹介している」というのは営業のよくある手口ですが、以外とこれに弱い人は多いようです。

未公開物件だろうが、優先して紹介されていようが、その物件を購入することでちゃんと利益がでるのか、焦らずに考えて下さい。

物件によっては自費でインスペクションを検討する。

個人間の物件売買では、瑕疵担保責任免責で取引をしているケースをよく見かけます。
※瑕疵担保とは建物の保証期間のようなもの

物件に故障箇所がでると、修繕に多額の費用がかかるだけでなく、建物の状態によっては入居率にも影響がでてしまいます。

簡易的なものであれば、数万円の費用で建物の検査ができます。
瑕疵担保免責や瑕疵担保3か月間の場合には、契約前にインスペクションの検討も必要です。

日本の不動産取引の問題点 まとめ

日本の不動産取引の問題点 まとめ

 

国交省は、将来的にはアメリカの不動産取引のシステムのようなものを日本でも導入したいと考えているようです。
試験的に横浜市で不動産データベースを作ったりしています。

そのため、各不動産業界の団体でもアメリカ視察に行ったりしているようですが視察に行っても何も改善されず、視察は業界団体のおじさん達の慰安旅行になってしまいます。

消費者よりも不動産業者に情報が多い現状に、居心地の良さがあるのかもしれません。

決して自浄能力が高い業界ではないので、今は消費者側がある程度自衛をする必要があります。

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