不動産専門のファイナンシャルプランナーとして活動していると不動産会社の営業マンとファイナンシャルプランナーの両方と交流があります。

どちらも不動産に関すること、お金(ローンや税金)に関することを仕事にしています。

しかし、不動産会社の営業マンはお金についての知識は足らず、ファイナンシャルプランナーは不動産について知識が足りないのが現状です。

この記事では、ファイナンシャルプランナーと不動産営業の専門性についてお話しします。

不動産に詳しくないファイナンシャルプランナー

不動産に詳しくないファイナンシャルプランナー 

私がまだFP資格を取得する前、住宅販売の営業をしていた時に担当していたお客様(Aさん)が商談の場にファイナンシャルプランナーを連れてきたことがありました。

そのファイナンシャルプランナーが提案したのは、ローン金額と自己資金の削減で予算を下げることでした。

老後の資金や教育資金を考えると住宅購入のためのローンと自己資金が多すぎると言うのです。

ファイナンシャルプランナーのアドバイスでAさんは検討していた物件を諦めました。

その後、Aさんは1年間物件を探し続けて、以前にあきらめた物件とほぼ変わらない金額の物件を購入しました。 

Aさんはお子様の通う小学校の学区内で家を探していました。
ファイナンシャルプランナーが提案した条件では学区内に希望する物件がないと分かるまで1年かかったのです。

私は最初の商談の時に提案された予算では希望する学区内では物件がないと、そのファイナンシャルプランナーに話しましたが、公示地価のデーターから学区内でも物件が探せるはずで相場よりも高い物件を勧められている。
検討している物件を買うことは将来的に危険であるから他の物件を探すように指示をされました。

東京都や神奈川県など都市部の物件の場合、公示地価よりも実際の取引価格が高いことはよくあります。


公示地価はある程度大きな土地を基準値としていることが多く、取引の多い60~150㎡くらい土地に比べると単価は安くなりがちです。

Aさんが検討していた物件は公示地価よりも1割ほど割高なものでした。
その物件は一番取引の活発な土地の大きさの物件だったため、需給の関係で公示地価よりも高い価格で流通していました。

しかし、ファイナンシャルプランナーは不動産の営業は高い物件を買わせたほうが手数料が高くなるから予算を下げることを嫌がるので、予算を下げた物件を積極的に紹介しないとお客様に話しました。

結局、公示地価程度の価格では1年間物件が見つからず、家計の支出として見込んでいた旅行や車の買い替えを見直すことにして元の予算に戻って物件を購入しました

Aさんに必要だったのは予算を下げて希望する物件を妥協するか、希望する生活のレベルを下げるのかという2つの希望条件の折り合いをつけることだったのだと思います。

知識不足にもかかわらず、不動産の営業マンの話は自分の利益のために物件を選んでいると決めつけてアドバイスをしたファイナンシャルプランナーによってお客様の住宅取得を遠回りさせてしまったのです。

お金の話に詳しくない不動産営業マン

お金の話に詳しくない不動産営業マン

逆のケースも多いと思います。
お客様が他社で検討している収益物件の収支シミュレーションを見せていただいたことがありますが適当に作ったものがたくさんあります。

家賃収入(不動産所得)にかかる所得税や住民税が収支に含まれていなかったり、一律20%で計算されていて実際の税負担と合っていないものが多いです。

所得税や住民税は累進課税です。
収入が多いほど税率が高くなります。

税率は給与所得と不動産所得を合算して該当する税率が決定されます。
給与所得はひとそれぞれ違うわけですからシミュレーションをする時には税率が何%になるか計算する必要があります。

シミュレーションを見せてくれたお客様の給与所得+不動産所得(物件購入後)の税率は23%なのですが、シミュレーションの税率は20%でした。

仮に700万円が課税対象額だった場合、税率が3%違うと年間で21万円の負担増になります。毎月2万円弱、大きな差がでてしまいます。

結局、この物件は購入しなかったそうですが、購入していれば計算違いのせいで見込んでいた収支が悪化していたことでしょう。

不動産に詳しいファイナンシャルプランナーは少ないのが現状

不動産に詳しいファイナンシャルプランナーは少ないのが現状

独立系のファイナンシャルプランナーの多くは保険販売や金融商品販売の手数料で事業が成り立っています。

保険会社の営業マンに不動産の相談をするようなものですから専門分野でない不動産に詳しくないのも仕方がありません。

資格取得の時に不動産について勉強しているとはいえ、実務と試験勉強では違うのです。
それに加えて不動産会社で働いていても情報収集に困るほど不動産業界の情報公開は閉鎖的です。

これは不動産業界の大きな問題なので改善するべきなのですが、現状では専門家でない人が正しい取引相場や地域の物件情報を得ることは非常に難しいのだと思います。

不動産会社の営業マンがお金の知識を身につけられるかというと、それも難しいのだと思います。


お金の知識どころか不動産を取り扱うための宅建資格でさえ持っていない営業マンはたくさんいるのです。

ノルマに追われながらの長時間労働で勉強する時間はそう多くは持てないのだと思います。

運よくお金の知識を持っている不動産の営業マンに担当してもらえれば良いのですが、担当者がどんな知識を持っているかは担当してもらうまで分からないのです。

消費者側が自分の身を守るためには消費者自身が正しい知識を身につけるか、不動産・お金どちらにも精通したアドバイザーを見つけるかどちらかが必要です。



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