いま話題の記事、『「頭金ゼロでサラリーマン大家」を借金漬けにする地方銀行のウラの顔』について書いてみたいと思います。
始めに断っておきますが、この記事のような地銀が100%悪だとは思っていません。
この記事は「プレジデントOnline」に掲載されているもので、4月に掲載された『要注意!「頭金ゼロでサラリーマン大家さん」のカラクリ』の続編です。
目次
「サラリーマン大家を借金漬けにする地方銀行」記事の真偽は?
この記事の内容の真偽はというと、概ね間違いないことだと思います。
ある地方銀行から、同様の手法での物件販売を持ちかけられたことがあります。
地方への投資は勧めていないことと、かなり危うい手法だったので断りました。
この記事では、多くの地方銀行がマイナス金利の導入で同様のことをしているように書いてありますが、地方銀行には融資をできる場所・人に一定の制限があるため、多くの地銀が関わっていることはないと思います。
マイナス金利の導入前から、住宅ローン金利は0%後半だったので、金融機関は実物の担保がとれて住宅ローンよりも金利が高いアパートローンに力を入れ始めていました。
ちなみに、地方銀行にはテリトリーがあります。
例えば、神奈川県の地銀は神奈川県・東京都・静岡県の一部の物件に融資ができて融資を受けられるのは、神奈川県に住んでいる人、勤務地がある人などのテリトリーがある場合が多いのです。
地方銀行は、どこの物件にも融資ができるわけではありません。
ただ、一部の地銀は全国に支店展開をしているので、支店のある地域には融資ができます。
プレジデントの記事は、この一部の地銀が行っていることを書いているのだと思います。
某地方銀行が行う問題の不動産投資スキーム
①地銀Aから紹介された地方のRC造の物件Bを不動産会社Cが購入、事業資金の融資を地銀Aが行う。
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②不動産会社Cが空室に6か月程度の満室保証をつけて、地銀Aで物件Bの担保評価を出す
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③物件Aはで30年フルローン可能な評価がでる価格設定をして不動産会社Cから販売される
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④不動産会社Cは顧客と、融資は地銀Aで受けることを条件に契約する
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⑤地銀Aで融資を実行・引渡し
このスキームのポイントは、収益還元法で担保評価を出すために、空室保証をつけることです。
物件Bは不動産会社Cが購入する段階では多くの空室があり、そのため相場よりもだいぶ安くなっています。
不動産会社Cへの融資は、転売事業のための融資なので、多少空室があっても融資はされます。その後、不動産会社Cが空室保証をつけることで、地銀Aが行う収益還元法の評価額が高くなります。
そのため、空室だらけだった物件Bは、フルローンが組めるほどの担保評価の高い物件となります。
空室保証にするか、短期の入居者を入れるかは、買い取る業者の資金力などによるのだと思います。
このスキームそのものは、法に抵触することは一切ありません。
この不動産投資スキームの問題点
私は、このスキームで物件を購入した人は、投資に失敗すると思って、このスキームの提案を断りました。
空室保証が終わったら・・・おそらく空室は半分くらいしか埋まりません。
どんなに運営努力をしても、もともと空室だらけだった物件を満室にするのは困難です。
そもそも人が少ない地域で賃貸住宅の需要が低いのです。
投資に適していない物件にフルローンを出して、投資家に販売をするのは、投資家の利益になりません。
30年間の融資は近い将来、返済に窮することになります。
しかも、フルローンなので事業計画には、それほど余裕がありません。
家賃が入金されなくても、ローンは支払わなければなりません。
不足分は自分の給料などを補てんして支払うしかないのです。
持ち出しが増えると、投資家は困ってしまいます。
そうすると銀行は、赤字補てんのために「融資をするから、次の物件に投資をして赤字を解消しましょう」と持ちかけてきます。
この続きは、次回書きたいと思います。