120年ぶりの民法改正「瑕疵担保責任」は「契約不適合」へ

企業や消費者の契約ルールを定める債権関係規定(債権法)に関する改正民法が26日午前の参院本会議で可決、成立しました。

民法制定以来、約120年ぶりに債権部分を抜本的に見直しました。

インターネット取引の普及など時代の変化に対応し、消費者保護も重視しました。
改正は約200項目に及び、公布から3年以内に施行となります。

改正された項目のうち不動産に関連するものは以下の点です。

・敷金と原状回復について明文化
・賃貸借の連帯保証について
・賃貸借の規定(期間や地位の移転など)
・瑕疵担保責任→契約不適合へ

賃貸借契約に関連する項目は、以前にこのブログで取り上げたとおりです。

「120年ぶりの大改正 民法改正の不動産賃貸業への影響は?」
参照
120年ぶりの大改正 民法改正の不動産賃貸業への影響は? #1
120年ぶりの大改正 民法改正の不動産賃貸業への影響は? #2

この記事では、民法改正のうち「瑕疵担保責任は契約不適合へ」について取り上げます。

瑕疵担保責任とは?

瑕疵担保責任、傾いた家

例えば、売買契約を締結し引渡しをした物件に雨漏りが発見されたとします。
現民法では売買目的物に「瑕疵」が存在するとして、売主は買主に対して、瑕疵担保責任(現民法570条)を負うことになっています。

不動産取引においては目的物を引渡せば売主は債務を履行したことになります。
目的物に不具合があっても、買主は売主に対して債務不履行責任を問うことはできません。

現民法570条では、目的物に隠れた瑕疵がある場合には、売主に対して損害賠償請求や解除権を行使することができるという救済規定を定めています。

改正民法では契約不適合へ

改正民法では契約不適合へ

改正民法では、売主は欠陥がない建物を引き渡さなければならない契約責任があり、雨漏り等の欠陥がある建物を引き渡せば、売主は債務不履行責任としての契約不適合責任を負うというものです。

これまでの瑕疵担保責任では、「隠れた瑕疵」という限定があり、買主側が注意してもわからないような瑕疵であることが要求されていました。

今回の改正では、買主に過失があっても、責任追及そのものは否定されなくなります。
(損害賠償の算定にあたって、過失相殺される可能性はあります)

契約不適合責任

 
契約不適合責任、家
 

目的物に契約不適合がある場合、買主は売主に対し、「目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」と規定されます。

売主が追完義務の履行に応じない場合は契約不適合の程度に応じた代金減額請求ができることになります。

契約不適合に基づく損害賠償は、通常生ずべき損害は全てが賠償の対象とされ、現民法と比べて買主が保護される内容となっています。

不動産取引はどう変わるのか?

不動産売買

現在の民法の瑕疵担保責任と同じく、公序良俗に反しない範囲であれば、売主買主の合意で責任を免除したり、範囲を限定することはできるだろうと思います。
(不動産業界の標準契約書では瑕疵担保責任は3か月間)

今回の改正は、判例などで定着しているこれまでのルールを条文に明記し、国民に分かりやすい法律にするのが大きな目的ですから、大きな変化はありませんが、買主(消費者)の保護がより明確になったと言えるでしょう。

今後は「契約の目的に適合しているか」ということが大切になります。
「自分がその家で暮らすため」「投資のため」など購入の目的を明らかにしておくことが必要になります。

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