7月1日に国税庁より平成28年度路線価が公表されました。
全国平均は前年比プラス0.2%で8年ぶりに上昇しました。
上昇した都道府県の数は前年比プラス4の14。
北海道、広島県、福岡県、熊本県がマイナスまたは横ばいからプラスに転じ前年にプラスだった都府県も、おおむね上昇幅が拡大しています。
都道府県県庁所在都市で、最高路線価が上昇したのは、前年比プラス4の25都市。
このうち、上昇率が5%以上だった都市が15に上りました。
横ばいは17都市、下落したのは5都市のみ。
国税庁によると、下落したのが5都市のみだったのは、1992年以来とのことです。
毎年この時期になると話題になる「路線価」ですが、正式には相続税路線価と言います。その名前の通り、相続税のための土地価格の指標です。
不動産の相続税対策の多くは、路線価の仕組みを利用したものとなっています。
この記事では、路線価の説明と、路線価の仕組みを利用した相続税対策について説明します。
目次
相続税路線価とは?
相続税や贈与税の財産を評価する場合に、基となるものです。
公示地価(一般の土地取引の指標となる数値)の80%と言われています。
相続税路線価を調べることができる財産評価基準書には、道路ごとに1㎡あたりの価格を1,000円単位で記載してあります。
路線価が定められていない地域については、その市区町村の「評価倍率表」に基づいて固定資産税評価額に倍率を乗じて計算します。
国が税金を取るために、道路ごとに値段をつけている路線価ですが、個別に見てみると「都市部では公示地価の50~70%だったり地方では公示地価の90%くらいで路線価がついているのでは?」と思われるところもあります。
都市部だと元々の土地価格が高いので、相続税が高くなりすぎてしまわないように低く調整して、地方では土地が安いので、相続税が安くなりすぎないように高めに調整しているのかなと考えてしまいます。
実際の売買では、価格がつかないような土地(人里離れた住宅として利用するのは難しい土地)からも国は税金を取る必要があるので、そんな調整をしているのかもしれません。
相続税路線価の仕組みを利用した相続税対策
路線価と実勢価格の差を利用した相続税対策があります。
相続対策のために不動産を購入するのは、相続財産となる土地の評価が実際に取引される土地の価格よりも安くなるからです。
公示地価が実際の土地価格だとすれば、相続財産の評価は‐20%となります。
(路線価が公示地価の80%とした場合)
1億円で土地を買えば、相続財産としての評価は8,000万円になり、2,000万円分相続財産を圧縮したことになります。
さらに、その土地に建物を建てて賃貸すると、貸家建付地の評価減を受けることができるので、現金で持っている場合の6割くらいに評価を減らすことができます。
建物の評価は固定資産税評価額です。
建物の固定資産税は新築時の場合、請負工事金額の約50%が目安となります。
5,000万円で建設した建物は、約2,500万円が評価額ということになります。
相続税対策としてのアパート建設は、この土地・建物の評価減を利用したものです。
建物の固定資産税評価の仕組みを利用して、タワーマンションの購入で節税をするスキームが流行りましたが、税務署に否認されるケースが出てきているようです。
今後は、相続税対策のためのアパート建設にも規制が入るかもしれません。