東日本大震災から6年が経ちました。
昨年の熊本地震も記憶に新しいところです。
株式会社オーナーズ・スタイルが行った調査によると、旧耐震の賃貸住宅を所有しているオーナーは4人に1人、賃貸住宅を所有するオーナーの半数近くが地震保険未加入ということが分かりました。
この記事では、地震が起きた時、旧耐震の賃貸住宅を所有しているオーナーの責任について説明します。
〇用語の説明
旧耐震基準
1981(昭和56)年5月31日までの建築確認において適用されていた基準。
震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、大きな破損もしない性能が基準となっています。
目次
旧耐震の賃貸住宅を所有しているオーナーは4人に1人
オーナーズスタイルの調査によると、旧耐震の賃貸住宅を所有しているオーナーは25.5%。築36年以上の建物を4人に1人のオーナーが所有していることになります。
同調査でも指摘されていますが、旧耐震の物件の多くが耐震診断や耐震補強工事を行っていない建物で、その物件には入居者が住んでいると推定されます。
目黒区内の木造住宅等耐震診断実績(H18~24)によると耐震診断を行った941件のうち、震度6強程度の地震での倒壊の可能性がある建物が約99.5%という結果が出ています。
※倒壊する可能性が高い(857件)、倒壊する可能性がある(79件)
地震保険に未加入の賃貸住宅を所有するオーナーは半数近く
所有する賃貸住宅全体の地震保険への加入状況を尋ねたところ、加入している55.6%、加入・未加入が混在している9.9%、加入していない34.5%であることがわかりました。
約半数のオーナーが地震保険に加入していない賃貸住宅を所有していることになります。
地震保険の保険金額は火災保険の半額までと決まっていて、制度的に補償される金額が今いち保険の意味をなしていないと考えている人もいるようです。
それでも、地震が原因の火災は地震保険でないと補償されないということもありますので、やはり地震保険には加入をした方がいいのではないでしょうか。
耐震診断・耐震補強工事への支援
自治体によっても異なりますが、国や県、各市町村では相談窓口を設けて耐震診断から改修までの支援を行っています。
参照
東京都耐震ポータルサイト
神奈川県内市町村における耐震診断・改修補助一覧
例えば、目黒区では木造住宅の耐震改修工事の場合、耐震改修工事費用の80パーセント以内で、上限150万円の助成金が受けられます。(2019年7月現在)
賃貸住宅オーナーには、入居者の生命を守る義務がある
賃貸住宅オーナーには、入居者の生命を守ることができる「安全な住まいを提供する義務」があります。
判例では、地震で建物が倒壊した場合でも、当該建物が建築基準法の耐震基準を満たしていれば、入居者の損害に対する賠償責任はないとされています。
ただし、建物の修繕状況が悪かったり、違反建築が原因で耐震上の問題があった場合には、損害賠償責任が発生する可能性があります。
融資を利用している場合、地震で建物が倒壊してもローンは残ります。
建物が倒壊(半壊でも家賃をもらうことができない)してしまえば、収入がなくなるのですから経営は破綻します。
オーナー側の安全な住宅を提供する義務、不動産賃貸業の経営面から考えても、耐震補強や地震保険の加入は必要ではないでしょうか。
賠償責任がないからといって、安全性を軽視するのは、経営者として失格です。