これから家を建てる人、中古の家を買う人、中古の収益物件を買う人など、不動産を買う人は「この建物は何年もつのか?」気になると思います。

建物の寿命が分かれば、「何年住める?」「何年家賃がもらえる?」という将来の計画がたてやすくなります。

法定耐用年数が誤解されているせいで木造住宅の寿命は30年などと言われますが、建物は定期的に修繕をしていれば50年、60年、場合によっては100年でも寿命を延ばすことができます。

この記事では、住宅の寿命と修繕工事の時期や必要な金額について説明します。

建物の寿命 解体された住宅の平均築後年数は約30年

建物解体

①統計データ

建物の寿命には統計データはなく、国交省の資料では解体された建物の平均寿命は日本30年、アメリカ55年、イギリス77年となっています。

早稲田大学の小松幸夫教授による建物の平均寿命(残存率が50%となる期間)の調査では木造住宅の平均寿命は約65年、RC造は約68年となっています。

②築30年超の建物に住んでいる人はたくさんいる

上記のどちらの調査も解体された建物から寿命を算出したもので、上記の寿命を超えた家に住んでいる人はたくさんいることが国勢調査のデータで分かります。

建築時期建物の数割合
昭和25年以前1,356,1002.53%
昭和26年~45年3,208,5005.98%
昭和46年~55年7,446,80013.89%
昭和56年~平成2年9,122,60017.01%
平成3年~7年5,208,2009.71%
平成8年~12年5,575,90010.40%
平成13年~17年4,968,5009.27%
平成18年~22年5,089,2009.49%
平成23年~25年2,855,2005.33%
平成25年~30年4,077,1007.60%
  不詳4,708,1008.78%
住宅総数53,616,300
出典:平成30年住宅・土地統計調査

定期的に修繕をしている建物もあれば、建物が古くなっても修繕をしていない、建て替えの時期を逃して放置されている建物もあると思いますが、築30年以上の建物に住んでいる人は約40%となっています。

統計から一般的に言われている「木造住宅の寿命が30年」というのは間違いで、築30年くらいになると建物を取り壊す人が多いということだと分かります。

法定耐用年数は建物の寿命とは無関係

法定耐用年数は建物の寿命とは無関係

建物の耐用年数には、法定耐用年数・物理的耐用年数・機能的耐用年数・経済的耐用年数があります。

自宅の建物の寿命という概念に近いのは物理的耐用年数、収益物件で考えれば経済的耐用年数です。

①法定耐用年数

税務上の減価償却率を求めるための耐用年数が法定耐用年数です。
数値の合理的根拠はよくわからないのですが、一般には使用限界として理解されています。

建築技術は年々向上しているにもかかわらず、RC造の建物の耐用年数が昭和26年には75年、昭和41年には60年、平成10年には47年と短縮されていることからも建物の使用期限と無関係であることが分かります。

増税の緩和策のため、内部留保の充実のため、固定資産の法定耐用年数は短縮されていると思われ、経済政策的なことで現在の法定耐用年数に落ち着いたようです。

②物理的耐用年数

材料・部品・設備が劣化して建物の性能が低下することで決定する耐用年数です。

③機能的耐用年数

建物が期待される機能を果たせなくなる年数です。
機能を果たすための費用がどの程度かで年数が決まります。

④経済的耐用年数

建物を維持するために必要となる費用が、建物が生む収益を上回ってしまうことで決定される年数です。

日本の住宅価値を下げる「法定耐用年数」の認識間違い

建物の価値を下げる

 国交省の「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル 平成25年度報告書」に以下の記述があります。

我が国の住宅は、建物の経年減価(木造戸建住宅は約20年で価値ゼロ)等により、資産評価額が投資額を大幅に下回るなど、国民経済上大きな損失(国全体で約500兆円、 50歳以上の二人以上世帯で平均約2000万円)。

中古住宅市場活性化ラウンドテーブル 平成25年度報告書

建物への投資が正当に評価されないことによって平均2,000万円の損失が起きているということです。

建物の経年減価(木造戸建住宅は約20年で価値ゼロ)の根拠は法定耐用年数です。

金融機関も法定耐用年数を根拠に建物を評価していることが多く、建物の寿命とは関係ない法定耐用年数への間違った認識が家計への莫大な損失を出しています。

建物の価値を高める工事は減価償却できるのですから、記録のあるものは価値に反映させて、金融機関も評価できるように改正すれば、将来の資産設計に好影響を与えます。

建物を長持ちさせるには?

建物を長持ちさせる

建物の寿命はもともとの耐久性より、むしろも使い方が問題です。

①水に濡れないようにする

水は木を腐らせる原因になり、鉄骨や鉄筋の錆の原因になります。
新築時は屋根、外壁が水の侵入から建物を守ってくれますが、年数が経過すると防水性能が落ちてきます。定期的な修繕が水の侵入を防いで建物を長持ちさせます。

②換気する

湿気がこもらないようにすることも大切です。
通気口をふさがない、浴室やキッチンなどの水回りは使用後に換気するなどして湿気がこもらないようにしましょう。

③建物の近くに花壇や木を置かない

建物の周囲に花壇があるとシロアリに侵入されやすくなります。
木材などを置くのも同様です。

一般的に新築時に行った防蟻工事の効果は5年程度でなくなります。
定期的に防蟻工事をしましょう。

修繕工事の時期と目安

修繕工事の時期

建物は何の修繕もせずに放っておくと毎日、雨・風にさらされている屋根や外壁はどんどんボロボロになっていきます。

建物がボロボロになるとアパートなどの賃貸用住宅なら入居者から敬遠されるようになりますし、自宅でも雨漏りなどの故障の原因になります。

建物の機能を維持するために築10年~15年くらい経ってくると外壁の塗装や屋根の張り替え、設備の交換など、大規模修繕工事を行う必要があります。

だいたいの修繕時期は以下の通りです。

  • 防水工事(屋根・屋上・ルーフバルコニー) 10年~15年に一度
  • 外壁工事(タイル・吹付け・塗装) 7年~10年に一度
  • 外壁シーリング工事(外壁・金物等) 10年に一度
  • 設備更新(空調機・給湯器などの交換) 設備の寿命によるが10~15年で故障するものが多い

修繕費はいくらかかる?

分譲マンションは修繕費を積立金として徴収されているので室内設備の交換費用を積み立てておく必要があります。建材メーカーのホームページなどである程度の価格を調べることができるので一度見てみると良いでしょう。

参考:LIXIL商品ラインナップ

一戸建て住宅はアットホーム株式会社の調査したデータが参考になります。

平均築年数35.8年で修繕費の平均総額556万円、修繕場所は「外壁」「給湯器」「トイレ」「お風呂」の順となっています。

戸建の修繕費と修繕場所

賃貸住宅は国交省がガイドブックを出しています。構造や規模ごとに修繕時期や費用の目安が説明されています。

参考:民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック

他にも国土交通省が分譲マンションの修繕積立金に関するガイドラインを公表していて、床面積あたりの修繕積立金の額の目安は、15階未満の建物でひと月あたり178~218円/㎡、20階以上の建物では206円/㎡と記載されています。だいたい1㎡あたり200円として修繕費を積み立てておいても良いでしょう。

建物の寿命 まとめ 

建物の寿命 まとめ
  • 傷みや陳腐化を補修・改修すれば新築と同じ  「学校施設の長寿命化改修の手引」文科省(平成26年1月8日)
  • 建物は、設計、施工や維持・管理の状況により使用価値を維持する期間が相当程度変わると考えられる  「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」国交省 (平成25年8月)
  • 中古物件の融資期間が、築年数を控除した法定耐用年数を大幅に超えるケースもあるが、この場合、耐用年数が客観的に評価されているか留意する必要。   投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果 平成31年3月

金融庁だけが法定耐用年数=建物の寿命だと考えているようですが、国交省や文科省は建物を修繕すると寿命が延びると言っています。

実際に建物の寿命は法定耐用年数とは無関係で、定期的に修繕をすることで延ばすことができます。

逆に修繕などを何もしなければ、時間の経過とともに朽ちてしまいます。

建物は50年、60年使えると考えて定期的な修繕と、そのための資金の積立をすることが大切です。

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