スルガ銀行の不正融資問題が発覚以降、投資用不動産向け融資は審査が厳格化されています。
一物件一法人や2重契約によるオーバーローン、金融資産エビデンスの偽造などのイリーガルな手法は行えなくなり、急激に規模拡大して専業大家になることは難しくなりました。
参照
犯罪の可能性も 違法なオーバーローンに注意
複数法人利用の「一物件一法人スキーム」はグレーゾーン?
不動産投資をやる目的が専業大家になってセミリタイアという人は目標達成に長い時間が必要になり、現実的ではなくなりました。
今まで多くの不動産投資セミナーや投資家のブログなどではセミリタイア、規模拡大以外の面についての不動産投資のメリットについて、あまり言及されていませんでした。
この記事では、この融資情勢下で不動産投資を行うメリットについて紹介します。
目次
不動産投資で資産形成
日本人は長生きになり老後の生活資金が重要になっています。
国はiDeCoやNISAなどの制度を作り、税制面での優遇措置を設け、国民の資産形成を促しています。
iDeCoは平成29年に制度を改正してより多くの人が加入できるようになりました。
金融庁・厚労省など役所の垣根を越えて制度を作り、税制面での優遇を行うのは、今までと同じレベルでは国が定年退職後のお金の面倒を見られなくなる可能性があるからかもしれません。
豊かな老後のために、これからは自分で資産の準備をしておく必要があるのです。
不動産投資は不動産の家賃収入や売却時の売却益など、資産形成を進めるための一つの手段になります。
年金不安へのリスクヘッジとして
メディアで定期的に年金制度への不安があおられているため、年金に不安がある人は多いようですが、日本の年金制度はよくできていて年金がもらえない可能性はありません。
もらえないことはありませんが、年金制度を持続していくためにいろいろな改正がされています。
昔は60才だった年金支給開始年齢は繰り上げられ、現在は65才となっています。
今後、さらに支給開始年齢は引き上げられる可能性があります。
支給開始年齢まで仕事を続けることができれば問題ないかもしれませんが、60才定年で定年後の仕事が見つけられない人は貯蓄を取り崩して生活しなければならなくなります。
もらえないことはないとは言っても、公的年金で受け取れる年金額はあくまでも最低限で、法改正等で減る可能性があるものと考えて、豊かな老後の生活のためには私的年金として資産形成を進める必要があります。
終身雇用の終焉 セーフティネットとしての不動産投資
トヨタ自動車の豊田章男社長が終身雇用の終焉について発言をして話題になりました。
「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」 2019/5/13 日経新聞より引用
日本を代表する企業のトップが発言したことで終身雇用から労働人材の流動化に進むのかもしれません。
流動化した人材が適正に評価されて転職する流れが進むとしても、転職活動期間など給与収入のなくなる期間のセーフティネットとして、ある程度安定した家賃収入がある不動産賃貸業は選択肢の一つとなるかもしれません。
副業・兼業としての不動産投資
いまだに副業禁止の企業は多く、リクルートキャリアの調査(2018年)によると、兼業・副業を禁止している企業は約7割となっています。
しかし、政府は「働き方改革」の一環としてテレワーク・副業・兼業を推進しています。
厚労省では「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表していて、今後は副業としての不動産賃貸業(不動産投資)という選択が増えるかもしれません。
不動産賃貸業は外部に委託できる業務が多く、副業として行いやすい面があります。
しかし、トラブルになった場合や緊急時の意思決定が必要な場合など、本業との兼ね合いが難しい部分もあり本業の勤務先の理解やある程度の融通のようなものは必要となります。
まとめ:不動産投資は正常な状態に戻りつつある。
もともと、急激な規模拡大はイリーガルな手法で行われることが多く、常に金融機関に不正がばれた場合の一括返済や違約のペナルティによる金利上昇などのリスクを背負った状態での不動産賃貸業を行わなければならない極めてリスクの高い手法でした。
融資が厳しくなったと言われますが、正常な状態に戻りつつあるとも言えます。
正攻法で不動産投資を行っても、資産形成に有効であることは間違いありませんし、規模拡大だけが不動産投資のゴールではありません。
これからは専業大家を目指すには地道に長い年月をかけて、経営者としての実力を評価されるようになって物件を増やす方法しか道はありません。
不動産投資をする意味はレバレッジをかけた規模拡大ではなく、もともとの不動産投資の恩恵を得ることに変わっていくのだろうと思います。